2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

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「姉に初めて会った時には 僕は小学生で、それまで、あこがれていた普通の家庭 そんなものをさっさと作ってくれた姉を疑うことさえなかったんです でも、今、冷静に考えれば 祖父や母、父が僕のころよりもひどかった時に 中学卒業してすぐに、僕の家を出たん…

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康太の顔を見ると ここからは、話すのはつらいって顔をしている 沢村にはこの、康太の苦悩の理由がすぐに分かった 「その敬愛していたお姉さんもお母さんと同じような 仕事をしていたんだね」 康太は沢村から言われて、ほっとしたように 「そうなんです それ…

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僕は姉のおかげでこうして好きな道に進むことができ 十分な教育を受けることができたんです」 沢村は話を聞きながら康太をますます好きになった 学生は、ここの学生は特に 立派な愛情あふれる親 社会的地位のある親 金銭的に豊かな親 人間的に立派な親 そん…

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「この姉が帰ってこなければ 今の僕はありません ぐちゃぐちゃの家に帰ってきて 爺さんから妹の世話を引き受け 爺さんに町内の掃除のボランティアなんかを させてしまうような道徳性を植え付けたり 父親には安定した家庭を作ってあげました この家に父がまじ…

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僕が生まれたときは 若い頭の悪い田舎から出てきたばっかりの 女の子を連れてきてはデレデレしている爺さんがいて 母親はとっかえひっかえ男を引きずり込み そのうち男とどこかに消えてしまう 息子や爺さんの前でもおかまいなし まぁ、爺さんは母の父親なん…

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康太はそんな沢村に甘えるように 自分の話を始めた 沢村には相手に全く緊張感を持たせないような 和やかな空気があったし 康太は沢村の理由のわからない好意をひしひしと感じていた 「僕、長いこと自分の生まれをのろっていました」 「え?そんな風にはとて…

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沢村はミキが消えた理由はそういうことなんじゃないか 長い年月、考えてみると すべてはそこにある気がした ミキが消えてすぐのころは ひたすら自分のほうに、ミキには口に出せない なにか嫌われるところがあったのだろう そう、考えていたのだが 少しずつ、…

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今までは自分の出自は絶対に誰にもしゃべりたくなかった 特に大学で友人、知り合いになった人には秘密にしたいとまで思っていた 中学受験をして以来、あの、忌まわしい家にまつわる人間は 一人も自分の周りにはいない いや、あそこの人間たちは今の自分の環…

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康太は本を置いてミキのところを出てから 少し、気持ちが変わってきた自分に気が付いた もちろん、翔子がミキだと気が付いたわけではない ただ、沢村教授の美しい文体で書かれた あの、恋物語は・・・・ ヒロインの翔子さんは世に言う風俗嬢だった 遊女、そ…

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「沢村教授って独身で変わり者なんだ すごく、おしゃれでね いつだって英国紳士みたいな格好しているよ 女子学生には人気なんだけど ひたすら文学一筋って感じで いつだってその中で生活してるって有名なんだ でも、この本を読むと この本が教授のことだとす…

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「この間、司法試験に合格したよ 今まで、ほんとうにありがとう」 ミキはその言葉で、爺さんから、いや、自分たちは知らないが その前の代の隠避な先祖の血を少しでも 浄化できた気がした こうなると、じぶんはもっと、康太からは離れようと 決心した 「よか…

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そんな日々が続いて、 仕事からの帰り道 康太が部屋の前で待っていた 「姉さん」 久しぶりに会うその顔には 前に家を出て行った時のミキに対する 嫌悪感はなかった ミキのほうが戸惑った 「久しぶりね、元気にしてた? お茶でも飲んでいく?」 そう、部屋に…

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ミキには康太の気持ちは手に取るようにわかった それに、自分は康太にはもう必要のない存在なのも よく、わかっていた これからは、たぶん、足を引っ張る存在でしかない その日から康太は帰ってこなかった ミキはこの家を売り そのお金と財産はすべて康太の…

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ミキがここに帰ってくるまで 何をしていたのか全く考えたこともなかった 聞いたこともなかった 自分の夢に夢中でミキはそれを全面的に応援してくれる 完璧な姉だと思っていた 今、冷静に考えたら ミキだってこの家の女だ 普通の人生を送っているはずはない …

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康太はミキの話を聞いて 苦しげに言った 「どうせそんなことなんだ どうして、あの親父はあんな女と結婚したんだ どうして、あの女はあんな女のくせに 結婚なんかして子供を作ったんだ こんな家であることに 俺は死ぬほど苦しんだし 今でもそうだ、友人も彼…

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ミキはみぃのことは安心した たぶん、家に連れて帰って普通の幸せみたいなことを 押し付けるよりも、正二のところにいたほうが みぃには幸せだろうとはっきり感じた 一番気になるのは母親のことだ 今も会ったりしているのだろうか 「あ、母親は大丈夫! ろく…

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『ばあや』はもう、いくつになるのだろうか? ミキがはじめて風俗の仕事を始めたころからいた そのころから、十分年を取っていた それでも、その風貌はハイジに出てくるロッテンマイヤーさんのようで 皆、恐れていた げんちゃんが店の総合プロデュースをする…

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ミキは唇をかみしめた その顔を見て正二は笑った 「俺の前で恥ずかしがることねぇぞ 親なんてそんなもんさ ここにいるやつで立派な親持ってる奴なんて 一人もいないしな それに、俺に任せとけよ みぃは必ず幸せな人生を歩ませる もちろん、一般に言われてい…

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ミキがそう言うと 「お前、もっと、頭よくなかったか? 俺が企業のサラリーマンになって幸せだと思うか? 俺がイケメンで売れまくりのミュージシャンになって 幸せだと思うか? 俺は女、それも風俗の女のプロデュースが一番性に合っていて たぶん、その手の…

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ミキが驚いて見返すと ミキの全身をなめるように見ていた正二が 「お前、体汚くなったな あの当時のお前は、俺が知っているうちでも ぴか一の体だったのにな」 なんだか、久しぶりにやらしい話で 少し懐かしい 「何言ってるの! 私がこの仕事に向かないって …

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正二の家は昔と同じだった ボロボロで昔のストリップ小屋の壊れかけたような外観 ドアをノックなんてレベルじゃない戸だが 一応、ノックした 中に人の気配はする しかし答えはない 思い切り激しくダンダンと叩く 「うるせぇ~ 入って来いよ、誰だよ!」 正二…

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その正二が手掛けているとなると 本物だ! 女を見る目なら日本一かもしれない男で この仕事で人生を送っているから 法令には厳しい 女の子を未成年では使わない どんな性戯だって違法すれすれのところで 止める術は知っている その彼がみぃの未成年を知って…

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正二には母親も父親もいなかった 風俗街の暗いカーテンの裏で生まれた 母親はそのまま消えてどこに行ったかもわからない 父親はもっとわからない この風俗街に来た有象無象の人間たち まともな生まれではない人間 まともな世界では生きていけない人間 やむに…

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ミキの様子を見て ゲンちゃんはすぐに堅気に戻ったなとわかったし 幸せそうなのも分かった そんな彼女がいまさらなんでここにきたのか 訝ったし、心配にもなった ここに来る女の子たちで本当に幸せになった子は 二度と戻っては来ない 「ミキはすぐに動画を見…

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ミキは昔の店に久しぶりに行ってみた もう、あの風俗店は無くなって新しい店になっていたが 相変わらず、毒々しい悪趣味な店構えだ 働いている人間は似たようなものだった 女の子はほとんど若くなっていたが あいかわらず、ここで女の子相手に働いている し…

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「それにしたって、 まだ、未成年だからね どこかの店?」 康太は口に出せずに首を振る ミキにはすぐにわかった その手の店やAVには康太の性格上 手を出すはずがない 「いま時なら、動画なのね」 康太ははっとミキを見た 「その動画、とってある?」 康太は…

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康太はミキが帰ってくるまで いったい何をしているのかも知らなかった 姉がいることは知っていたが この家の女だ、どうせ母親のような生き方をしているに決まっている そう、考えていたから ミキが帰ってきたときに驚いたし 自分と同じ気持ちの姉が急に現れ…

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康太は悩んだ しかし、今の二人の生活の快適さを思うと あんなことをして たぶん・・・・金を稼がされているみぃを ほっとくべきではない そう考えた しかし、みぃが一体どこにいてどんな暮らしをしているのか 康太には探す方法すら、その場所はいかがわしそ…

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一瞬、それは大嫌いな母かと思った そして、冷静になるとすぐにわかった みぃだ! そのエロ動画の女の子はみぃに間違いない 「な、めちゃかわいいだろう? すっげぇんだよ、この子 たぶん、まだ、十代だよなぁ この子、何でもやるって動画で あ・・・もちろ…

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願い通りに行きたい私立中学に入り こ自分の生まれから脱却するには 学歴をつけて頭で勝負の仕事に就く 勉強は得意だし嫌いじゃない 自分でお金を稼ぐことができるようになったら 違うところに家でもマンションでも買って まったく普通の人間になる 姉のミキ…