2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

そして恋人へ

優未はちょっと、考えながら 「そうだね、今のままでもいっか! 勉強するのは好きじゃないし 別に他に夢とかないし やりたい仕事もないんだ~」 若い子がそんな風に話すのを聞くと 今までの康太ならば、家庭に恵まれ 小さいころから学校もそん色のないところ…

発達障害の母

「それがこの村のいいところでさ うちのじいちゃんが景気が良かったころ 私費を投じて公民館を作ったとか 昔はお金は村長の家に借りに行って いっさい返せって言わなかったとか 昔の恩を忘れないでいてくれてさ だから、本当なら医者の星田んちが一番良かっ…

発達障害の母

それを聞いて、私はそんな風にずっと見られていたのかと 不思議な気持ちになった 「そうだよ!あ~ちゃんはみんなに対して冷たかったよ 本当は誰もがあ~ちゃんとは友達になりたかったんだ でも、なんかブロックしてただろう? もちろん母親のことがあるから…

そして恋人へ

実は口ではいろいろ言ってはみたが 生まれて物心ついてからは 幼児教室、それから今の学校の付属の幼稚園 ママに似て嫌いだなんて言っているが 小さなころからの幼馴染で 気心が知れないっていうのもあった 両親が離婚したときに優未よりも そのころからの友…

そして恋人へ

今、優未が通っている学校ではそんな子はいないのだろうか? 何か好きなことに一生懸命な子供にとって 中高一貫校ってやつは余計なことに時間を割かれることなく 授業さえしっかり受けていれば楽しいはずだが 都内の高校を探しながらそんなことを思ったから …

発達障害の母

「え?あんな昔のこと、私ですら忘れていたのに」 「いや、ごめんって気持ちもあるんだけれど 俺が息子を育てるときに いつも思い出したのがあ~ちゃんの態度だったんだ 親とか教師とか、誰もがみんなと一緒とか 同じように喜同じようなことをやれって感じだ…

そして恋人へ

高校に入るってどういうことか康太は知らない 康太は姉のおかげで、中高一貫に通った 男子だけだったが、楽しかった もちろん、優未が言うように 優未の母のようなタイプが鼻につくのはわかる 育ちがよくて、明白な自分の将来のビジョンを見ていて 親が泣い…

発達障害の母

え?三人とも驚いた 中でも私はあまりに接点がなかった 小学校、中学校時代を思い驚いた 「いや、あの頃、俺は反抗心の塊のような子供で 誰に対しても腹を立てていたんだ 親はもちろんだし そういう境遇だと知りながら親の言うことを聞けという教師 幸せそう…

そして恋人へ

康太は首を激しく振った まるでロリコンじゃないか だめだ、冷静に彼女にとって一番いい未来を 一緒に探してあげなければ 「戸田さん?どうかした?」 「あ、いや、じゃあ、今度の日曜にでも事務所においで 都内の高校の資料を用意しておくよ 君も自分で行き…

発達障害の母

確かにそうとしか言えない 頑張れば無理した分のひずみが帰ってくる そんなふうにしか言えないのだが じゃあ、16の私に無理はするな このままこの村にいればお金に困ることはないし 周りの畑を耕し、米を作って平和に人生を送れるよ そう言ったとしても、…

発達障害の母

「すげえなぁ、俺なんか 子供は放っておいても育つって思ってって 全部嫁さん任せだから まぁ、ロクなもんには育ってないけどなぁ」 友くんがそう言いながら頭をかいた するとネコも 「俺も嫁さん任せ! なんだかさ変な話だけど 子供の時不幸なほうが いい親…

そして恋人へ

「それは、手伝うよ 今、中学二年生だっけ? 高校で出るってこと? どこか受験するってこと?」 「そう、中学の間はね 今、公立に変わる勇気はないんだ 小学校からずっと、女の子だけの世界でしょう ママのことは嫌いだし ママみたいな人も嫌いなんだけど 一…

そして恋人へ

優未は不思議な顔をして 「会いたいから会いに来たの! 家庭に不満はないの 高校に行くのはめんどくさいと思ってる 今の高校、ママみたいな人が中学生やってるって感じなんだもん できたら、高校を選ぶの手伝って!」 あの父親だと、好きにしろで終わりだろ…

そして恋人へ

みつほとの結婚生活は少しも楽しくなかった いや、みつほの母親からしたら みつほのほうが地獄だったというかもしれないが 殴っていた自分は辛すぎて、自分が怖くて 自分が嫌いだったし 今も自分のことは大嫌いなのだ 誰と喋っていても、仕事をしていても そ…

発達障害の母

「私も子供ができたら自分の親とは 全く反対のことをしようと思った 子供のことだけを考えて、毎日を過ごしたよ」 「そう、そう、俺なんか朝は五時に一緒に起きて 二人で河川敷を走って、柔軟やったり 小さいうちはキャッチボールしたり でもそれがちっとも…

そして恋人へ

「あ、ちょ、ちょっと待って DVって言っても、たぶん、あの、親がそうだったとか そういうんじゃなくって、嫁が特殊で 彼女じゃなければ、そんな男じゃないよ そういう環境じゃなかったし・・・・」 あたふたとしながら、中学生の優未相手に 本気で弁解して…

発達障害の母

中学を出た後、ケロは私と同じで 少しでも家から逃れたいと大阪に就職したそうだ それからは、まぁ大変だったことはしゃべらずとも 想像はできる それでも、何とか自分で水道屋を始めて 結婚もできて息子はケロそっくりの運動神経の良さ 小学校の頃から野球…

そして恋人へ

康太は優未に結婚していたと言うのが躊躇われ 躊躇っている自分を不思議に思った 「ああ、この間まで結婚していたんだけど 離婚したばっかりだよ」 優未は不思議そうにでも、うれしそうに 「どうして?どうして別れたの?」 さて、どうしたものか 自分はこの…

発達障害の母

「そういうことだったのね 私、あの頃、ケロの家の母親が後妻だって知らなかった そうだよね、抜群の運動神経だったのに どうして、代表にならないのかも不思議だったわ」 「ハハハ、あ~ちゃんは俺のことなんか完全無視で 勉強してるか本読んでるかだっただ…

そして恋人へ

「じゃぁ、もう、籍は入れたの?」 「ううん。パパは入れないって!」 「優未ちゃんのため?」 「違うの、癪だけど! 今の彼女が夢から覚めた時に戸籍が汚れてないほうが いいだろうって! 所詮、恋ってやつは覚めるものなんだから その時に綺麗なままの戸籍…

発達障害の母

「あの頃、おれ、ちっとも楽しくなかったんだ 俺んちって継母だっただろう? オヤジといちゃいちゃするか人の悪口ばっかり 俺、小学校の頃は世の中すべてに反抗してたからな あの頃、知ってはいたんだ 俺は継母で苦労してたけどお前だって苦労してたこと そ…

そして恋人へ

「どうしたの? お父さん、結婚したの? 居辛いんだったら、お母さんのところに行ったっていいんだよ そういう取り決めになってるし」 「ううん。パパの奥さん、いい人なの 私のお母さんになろうと頑張ってるの ほら、今日のお洋服も彼女が選んで買ってくれ…

発達障害の母

店に行ってみると友くんとネコもいた すると、その横にいたキンキラのおっさんが 「わ~、おばさんになったなぁ~! 小学校の頃、俺が一番、嫌いだった女!」 すぐにケロとわかった その、昔と全く変わらない毒舌に ちょっと、ひるんだ 「ほら、全く変わって…

そして恋人へ

「何にやにやして考えているの? 弁護士さん!」 優未が少し大きな声でそう呼ぶから 近くに座っている人たちが、康太を物珍しそうに見る 「ハハハ、弁護士さんはやめよう」 「じゃ、先生?」 「いやいや、僕は戸田っていうんだよ」 「戸田さん?」 こんな会…

発達障害の母

それは優等生を気取っている私の胸をえぐる言葉だった 思ったことは必ず口にする そして、その思ったことっていうのが たいがい誰もが考えているけれど口にできないことだ もちろん、ケロは私にだけそんなことを言うのではない 誰にでも、そういう風にものを…

そして恋人へ

服だって洗濯はめったにしないから 汚いし、古いものだ 学校の友人なんていなかったから 毎日、本ばかり読んでいた クラスに父親が海外勤務だから 中近東から南米に 行くまでの間、日本に帰ってきている 本当ならば私立の小学校に行くようなお嬢様が ほんの…

発達障害の母

そう言えば小学校の頃は皆に嫌われて 頭も悪くて、いつもたった一人で小汚い格好で 教室の隅にいた 休み時間にはみんなでドッジボールをやっているのを 横目で見ながら、鉄棒の棒の上を軽業師のように歩いていた 私も皆とドッジボールをするようなことはでき…

そして恋人へ

康太は気持ちが小学校高学年に戻っていった あの頃・・・・ 母は男と出ていき、父親は帰って来ない 頼みの爺さんはフラフラと毎日、みぃの手を取って パチンコに行ったり、もとの客引き仲間と 飲みに行ったりと康太のことなど心配もしなかった 康太は朝ご飯…

発達障害の母

行きたくはなかった 今でもあんなに心が傷ついたことは ほかに思い出せない この村にいたくないと、この同級生たちとは 早く別れたいと思わせたのはケロがいたからかもしれない 友くんはただただ、懐かしいだろう! そういう気持ちだと思う 私とケロのことな…

そして恋人へ

康太はショット、中学生に言うべきではなかった いくら自分のことをまっすぐに言ってしまったとはいえ ちょっと、あの年齢には酷なわかりづらいことを 言ってしまったのじゃないかと 反省していたから、すぐに連絡を取ってみた そしたら、会いたいという じ…