そして恋人へ

服だって洗濯はめったにしないから
汚いし、古いものだ
学校の友人なんていなかったから
毎日、本ばかり読んでいた

クラスに父親が海外勤務だから
中近東から南米に
行くまでの間、日本に帰ってきている
本当ならば私立の小学校に行くようなお嬢様が
ほんの数か月いたことがある

女子なんて康太の周りに来るのも嫌そうな子ばかりだったのに
その子は本を読んでいる康太のそばに来て
読んでいる本をのぞき込むと

「へぇ~、徳川家康読んでいるんだ!
山岡荘八、私も全部読んだよ
パパに日本の本を読めって言われたんだけど
面白いよね~」

そう言って笑いかけてくれた
大学まで女のことなんか付き合ったことのない
康太の唯一の女の子の思い出だ
優未を見て、その時のことを思いだした