2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

理想の父

学歴のないトラック運転手一筋の父 最後は事故で死んで、保険金を残してくれた 自分の家族のことはコンプレックスでしかなかった しかし、あの家に住むお金 食べ物、そして日本一難しい私立の中学の学費 それまでの塾のお金 ちょうど母がいなかったから、そ…

逃亡

村では誰も相手にしていなかったシカオは 私だけには気持ちがわかるだろうと思ったのかもしれない 「ばあちゃん、あんた、これでいいのか?」 シカオは村の若い者のなかではめずらしく 180近い身長があって、少し怖い 「いいとか、悪いとかじゃないだろう? …

理想の父

「じいちゃんはよく 『あの二人は本当に好き同士なんだぞ!』 とか、『みぃは幸せもんだな、あんなに仲良しの 父ちゃんと母ちゃんを持って』 口癖のように言ってたんだよ」 康太には寝耳に水の話だった だいたい、康太は爺さんも嫌いだった 家にいても爺さん…

逃亡

それでも、田舎の婆さんが考える一番えげつない行為よりも もっと、嫌らしいことだったのだろう 結婚式の三日後にはその嫁は、真っ青な顔をしていると 村中が同情していた その嫁に手を差し伸べたのがうちの夫だ うちの爺さんがそういう若い女を放っておけな…

逃亡

この村にも性的異常者はかなりの割合で生まれる それでも、村で生きていく以上は それは抑えて、ここから3時間はある繁華街の街まで行って 何とかしてくるのだ だけど村の何十年も住んでいる年寄りは ちゃんとわかっている その匂いがシカオにはあるのに 都…

理想の父

「ああ、私はお父ちゃんのことなんか もう、顔も覚えていないんだけど じいちゃんがすごく感謝してて お給料日が近くなると お父ちゃんとお母ちゃんのなれそめとか 色々話してくれたんだ~ ほら、本人が無口だったからお姉ちゃんも 私が話したことしか知らな…

逃亡

子供の頃はこれで済んだが 小学校高学年になると よその家の風呂場を覗き見る 若い女の子たちは、こんな田舎では そうやって見てくれる男なんかいないから きゃあきゃあ文句は言っても 本当は喜んでいる 懲らしめるべきおっさん達も 男の子だから仕方がない…

理想の父

「速水からうちの章子の話は聞いてない?」 妹とこんな話をするようになったかと思うと 照れくさい そう言えばみぃの息子のショウはずっと、ヨーロッパの 学校で過ごしたと言うことだった 「高校くらいの時って、彼女とかできなかったの?」 みぃは笑いなが…

逃亡

そんな中で件の嫁の夫は 異色な子供だった 小学生の頃は村の各家に入り込んでは 食べ物を食べる 村のことだからどこもカギはかけていない 大根がたくさん取れたら、勝手に入って行って 台所に置いてくるなんてことが通常だった しかし、冷蔵庫は開けないくら…

理想の父

人と会話はあまりできない 父が一体どういう人だったかを知る術はもう、ひとつもない 母もミキももういない みぃは?いや、知っているはずがない そう思ったが、念のために連絡してみると 父と母が知り合った経緯や父の仕事のことなど 祖父からよく聞いたと…

逃亡

だいたい、うちの村は割と穏やかで頭の悪い人間が多い 昭和の親がいる家では、子供のしつけに 親が手をあげるのは当たり前だと言う人もいるが そんな村ではなく、子供も親の言うことは聞くと しつけられていた 貧乏な村だったから、子供は中学を出ても だい…

理想の父

だいたい、何故、母は父と結婚したのだろう? 康太が知っている母の愛人は 皆、母より年下で顔がいい人だった 小学生の康太が見ても、かっこいい人だな~ そう感心してた記憶がある 父は顔は良くなかった 康太は母親に似て、姉と妹のみぃは祖父に似ていた 母…

逃亡

東京ってところはやたら人の多いところだ こんな中から、なぜ、ピンポイントに私なんだろう 田舎ではこんな好き放題物を言う私も そうとう気を付けていた だって、村の誰もが私の住んでいるところを知っていて 恨まれたりしたら本当に大変なのだ だいたい、…

理想の父

康太は、すこしうんざりした 娘のことは気になって仕方ないし とにかく、父親の権限があるとすれば 嫌な父親と思われても 彼らを別れさせたい いや、その権利はあるだろう? そんな風に自問自答しながら 娘に幸せになってほしいと父が願うのは ごく普通のこ…

逃亡

東京に来たばかりで孫のチェリーのことで ひ孫もでき、美佐子さんという新しい嫁に会い あっという間に一年近くたっている でも、ここに引っ越してきてやっと落ち着いた感じだ その女のことは気になったが 今のところ近くにいるようではない 引き続美佐子さ…

理想の父

「お母さんが一番好きだったお花だし お父さんはこの花を持ったお母さんが 一番好きだったと思うから 二人して大喜びだと思うわ 叔父さんは、仕事が忙しいんじゃないの?」 速水は康太が母の墓参りするのは 珍しいことだと思ったが そう言うのもなんだし そ…

逃亡

その濃い化粧の顔は東京に出て来てからは まったく身に覚えがないし 田舎の村でもこんな人はいなかったと思う ただ、私は今の生活が少し窮屈にはなっていた ここは高級マンションで、揃えられた家具も どれも、お金のかかった素敵なものだが どうも趣味が違…

理想の父

実家の親と相談して小百合が何か奔走していたのは 知っていたが、見て見ぬふりをしておいた 数百万は動いたんじゃなかろうか そして手に入れたのびのびした環境の結果がこれか! 康太は子供のころ憧れた、裕福で幸福な家族ってやつが 結局はあんなふうに貧乏…

逃亡

それでも、全く相手もわからないまま一週間ぐらいすると 幸喜が朝から慌てて飛び込んできた 「ばあちゃん、逃げないとやばいよ 夜中に変な化粧の濃いおばさんが カップヌードル一個買ってさぁ 俺にやたら聞くんだよ 俺がばあちゃんと一緒に住んでるとは知ら…

理想の父

章子はよりにもよって・・・ 自分の子供時代から考えたら よほど、恵まれた環境にいるのに・・・ 小百合が章子に一生懸命なのはよく知っている 母親があんなに自分に一生懸命だったら でも、康太には姉がいた 姉が帰って来てからは、康太のために一生懸命だ…

逃亡

「お義母さん、警察は先日の事件の時 ただの空き巣の仕業だろうと結果づけたみたいですが 私が調べてもらった私立探偵は あの空き巣事件の前に、あのあたりの周りを調べていた 女がいたそうです それで、回りの商店街とかに聞きまわっていたのは 『あの部屋…

理想の父

犯罪者はたいがい、発達障害だ 1たす1は2というのがまったく理解できない 計算ができないと言うのではなく こういう行いをしたら、こういう結果が出てくる 一般の人だったら、ほとんどの人がわかることが わからないのだ 離婚調停でもそうだ 嫌いと言って…

逃亡

でも、その時間はほんのつかの間の物だった 美佐子さんが買い物から真っ蒼な顔で戻って来た 「お義母さん、ここも危ないかもしれません すぐに逃げたほうがいいです」 「え?何?どうしたの美佐子さん、 逃げるって?幸喜が関係してたやくざからなの?」 美…

理想の父

章子は雅紀が好きなのだ それはいい 娘を持つ以上、そういうことは覚悟していた しかし、体の関係もあるとなると 父親としては複雑だ まぁ、それは仕方ないのかもしれない でも、雅紀が普通じゃない・・・ 康太は事件弁護もやる 日本の事件のほとんどは あま…

逃亡

息子はチェリーの母親は 追っかけられて、仕方なしに結婚したようだったが この、美佐子さんのことは間違ってはいなかったようだ まあ、チェリーの嫁だって 間違ったと言いたくはないし、そんなことで 言いくるめてはいけないことなのだ このマンションで暮…

理想の父

康太は小百合の気持ちはよくわかる 雅紀と章子のことは小百合以上にショックを受けていた それは、あの数日のことが頭を離れないからだ 最初に章子が家出したとき 岡本に売られる前に気が付いて救い出しに行けた それは、本当に良かったと心から思う しかし…

逃亡

私はそのスナックで常連の 小金持ちのお爺さんに買ってもらうことになり 後で聞けば、両親に200万、スナックのマスターに100万 払ったそうなんです あ、でもそれは誤解しないでくださいね 親指姫がモグラのおばさんに親切にされ 金持ちのモグラに嫁ぐように…

恋をしたとき

「小百合さん、意外に倹約家なのね」 「え?違うわよ!でも、お金を使ったら それなりの成果をあげなくてはっていうのは 普通のことじゃない? うちの家ってみんなそうなのよ 一見、裕福な家に見えるけれど 母はティッシュペーパーだって、 あ、ほらあれって…

逃亡

「父と母は残ったお金でアパートを建てて その管理人としてやっていくことに決めて 私が高校のころには三人で そのアパートに住む大家におさまっていました 小さなアパートだし何かと物入りなことも続いて 私は高校に通うのが精一杯でした それでも高2になる…

逃亡

美佐子さんは、すぐに頷いた これは不思議なことなのだが 人間てやつは気が合うとか、一瞬にして ああ、この人ならば・・・ そう思うことがある 私は美佐子さんと会ったときにそう言うことを感じ それは美佐子さんもそうだったようだ 静かに自分用のコーヒー…