理想の父

イメージ 1

「ああ、私はお父ちゃんのことなんか
もう、顔も覚えていないんだけど
じいちゃんがすごく感謝してて
お給料日が近くなると
お父ちゃんとお母ちゃんのなれそめとか
色々話してくれたんだ~
ほら、本人が無口だったからお姉ちゃんも
私が話したことしか知らなかったのよね
お母ちゃんなんか、若い男の話はぬけぬけと
家族の前でするくせに
お父ちゃんの話なんかしたことなかったもんね」

康太はその話の時が一番嫌だった

「それで、お父さんっていったいどうして
あの、お母さんと結婚したんだい?」

「私も小さかったし、ちゃんと聞いたわけでもなかったんだけど
お母さんのほうが大好きになって
家に引っ張り込んだんだって
それで、お爺さんが籍を入れたらどうかって聞いたら
お母ちゃんが勝手に婚姻届けを取りに行って
お父ちゃんの返事も聞かずに印鑑を押したって」

「へ~お母さん、あんなに男を次から次へと作ったのに
そう言えば、離婚とか結婚とかしなかったな
離婚を言い出したとしても、あのお父さんならば
嫌だとも言わなかっただろうに」