2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

その先

「僕、おばあちゃんにもあったんだでも、僕のことを『汚らしい不倫の子』って言って、目も合わせなかった。まぁ、そんな人だからお母さんが動けなかったんだってよくわかったし、父さんにはすごくよくしてもらった。今でもたまに会うんだよ」私は驚いて信行…

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「ごめんなさいお母さんに逆らう勇気も気力もなくてお父さん、あの時、私はついていくべきだったのね」「もう、過去のことは言うなよあの時はおばあちゃんがお前に無理を言ってどうしようもなかったくらいわかっている今考えたら、婆さんも母さん、そっくり…

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「色々、母さんも大変だったねおばあちゃんが最悪な人なのは父さんから聞いたし小さい時は、本当の母さんのことは知らなかったけど中学の時にしっかり説明してもらったし亡くなった母さん、あ、育ててくれた母さんだけど凄くいい人で、僕はたまに遠くから母…

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「妻が不妊症でねあなたの孫に当たるのならばぜひ育てましょうそう言ってくれたから、うちで育てることにしたんだもうすぐ帰ってくるから」そう言っている間に澄子ちゃんによく似た30前後の男の人が寿司桶を抱えて入ってくると「母さんが来てるって?お寿司…

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父親はすぐに思い出した「ああ、あの花ちゃんかぁあの頃からあいつ、おかしかったから随分迷惑をかけたねそれでも、ずっと友達でいてくれたのかありがたいことだ」いろいろ事情を詳しく話したかったが子供の話を聞いて澄子ちゃんが動揺しているので私が話を…

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長い年月、会わなかった二人の会話は落ち着いていたしその中に深い喜びを感じたわたしからすると、いい大人同士になった時にこっそり会ってもよかっただろうにそう思うが、ここの母の強烈さはそれすらさせないほどだったのかもしれないしばらくして父親が「…

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「確か、男の人私はてっきり、ご主人、あなたのお父様そう、思ったのですがお父様は?お聞きになりました?」私たちの中で、離婚した父親のことは全く頭になかったすぐに、澄子ちゃんは母親に隠していた住所を探し出した電話番号まではわからずそのマンショ…

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私たちは産院を訪ねたその当時を知っている看護師さんがいた「覚えていますよ!私も看護師になりたてで奥さんが同い年くらいだったので子供を取り上げられて毎日泣いていて、とても気の毒に思っていましたあの時のあなたのお母様、私は事情は知りませんでし…

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「それで、どうなったの?子供は?ここで育てたの?」澄子ちゃんは眉を潜めながら「病院で生まれたその日に母がどこかに連れて行って誰かにあげたらしいのそれ以来、私はその子がどうなったか何もわからないのよ」私は流石に堪忍袋の尾が切れた「何言ってる…

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「それで、どうなったの」私は、あの母親だし今まで聞いた話からもうまくいったとはとても思えなかった「それが、子供ができたのよ」「え!澄子ちゃんに?」もう、驚くしかない「ええ、でも、その人奥さんがいたの私も何も言えないまま別れたんだけどお腹の…

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「で?恋愛はしなかったって?」私が少し面白がって突っ込むと「この家でしょうここの庭は私や母ではとても無理だから季節ごとに庭師に入ってもらうの」え?それって、昔のお嬢様みたいな庭師の若者とって感じかしらそう期待してしまう「植物学を大学で学ん…

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「それからは私が仕事に出るのを嫌ってお金はあげるから、家に居なさいって言われて、今考えると私も母の言いなりになるなんておかしいとわかるんだけど当時はとにかく、母がそう言うのなら仕方がないって諦めていたのね」「お母さんは澄子ちゃんの結婚は望…

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「仕事は何をしていたの?」澄子ちゃんは恥ずかしそうに俯いた「最初はね母の希望通り大学を出て大手の銀行に就職したの」「まぁ、すごいわね!」「就職した途端に帰りも遅い、人付き合いもしなくちゃならないし、飲んで帰ることもあったんだけど母はそれが…

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「今時ならば、ネットとかでそう言うのを『毒親』って言うんだってすぐにわかるけどその当時、おばあちゃんは知らなかっただろうからね」すると、澄子ちゃんはガラケーを見せて「私がスマホを持つのも反対だったしパソコンだって家の中では禁止だったの長い…

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「そのうち、父が部下の女性と付き合っているのがわかって母は半狂乱!父は母と離婚してその方と一緒になるから、私にも一緒に来て欲しいって言ったのそう決まって、私もその方に会ってまるでお姉さんのように私に接してくれてすごく良い方だったわ私もそう…

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澄子ちゃんのその言い方に私はしみじみ「苦労したんだね。ご苦労さん」そう心から言ったどんな人生かはわからないがあの母親が先月まで一緒だったのなら澄子ちゃんの苦悩はよくわかる「あれから、東京のこの家に帰って私は中学受験をしたのでも、母の気にい…

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「まぁ、それはご愁傷様ご仏前にお参りだけでも」私は実はそういうタチではないのだが常識的な反応をしたすると、澄子ちゃんは「ないからいいのよ!お葬式も仕方なくやって誰もきてくれなくて父すら来ない葬儀で私は、やっと母からの呪縛から解き放たれたの…

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「なんか、変わってないわねぇ東京にはどうして?」澄子ちゃんは落ち着いた口調で言う私の方がドキドキしている東京に来た経緯を話すと「まぁ、じゃ、これからはしょっちゅう会えるわねお孫さんが中学生?いいわねぇ!私は結局、結婚しないでずっと一人」そ…

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私は卑下して生きてるわけではない澄子ちゃんよりは私が頭がよかったのは事実だが、村でもそうだ医者の家、村長の家、警察の家代々、その家の子が継ぐことが多いそう言う家は昔から部落の相談役のような役目をしていて東京で嫁の言うところのハイクラスな家…

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私はそれに対して反発していた澄子ちゃんの家は百姓の自分の家とは絶対に違うお母さんだって、うちの母親とは全く違ううちの母親がスカートを履くのは学校の行事の時だけだし化粧だって滅多にしない私の勉強だって見ないしテレビドラマを見るのが趣味の人だ…

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長い年月、会っていなかったけれどすぐに、お互い抱き合って再会を喜んだ急に止まった手紙!私たちはどちらも辞めたくはなかったのだ私はあの後、何度ももう一度出そうかと考えたが父や母が『東京のお嬢様とうちでは違いすぎるあそこのお母さんが許すはずも…

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私は躊躇なく押してみたこの年になると、躊躇したりしている時間はない「どなたですか?」チャイムを押して、ドアホンから出てきた声は澄子ちゃんだったすぐにわかったもう、何十年も前に聞いたあの声だったもちろん歳は取っていたが…「澄子ちゃん?」その、…

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東京に出てくるまでこの住所が一体どんなこところなのか想像もつかなかったが嫁のおかげで、東京は人間の棲み分けが田舎よりも凄いことを知った山の手、下町、おしゃれな商業地区年寄りだらけ、そして、若者だらけ澄子ちゃんの、私が持っている住所は相当な…

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それ以来会っていないが私が夫が死んで全てをたたんで東京に出てこようと決心したのはこの、小学校の時の澄子ちゃんの手紙の影響だった澄子ちゃんは私がテレビの中でしか知らない東京をその文ですごく素敵に教えてくれたそれはテレビではわからない本当の東…

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私と澄子ちゃんはそのあと中学生になるくらいまで文通をしていたその頃、少女たちは文通をしたくて仕方なかったレターセットを買うのが小学生の女の子たちの楽しみだった特に、東京の澄子ちゃんからの手紙は可愛かったり、美しかったりでその頃の私の一番の…

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二人が気まずそうに黙ると澄子ちゃんは「ママってね、パパと喧嘩ばかりしてるの東京育ちだからこんな遠くの村に来ることは嫌だったの私にも中学受験があるし、勉強も遅れるからって嫌だってパパに言いなさいって言ってたのでも、私はパパと離れるのは嫌だっ…

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澄子ちゃんだった別に悪口を言っていたわけじゃないが二人ともドキッとした「ママがごめんなさい」村の中で母親をママと呼ぶのは誰もいない二人ともそれだけでなんだかすみこちゃんはテレビの中の人の気がする母親のことも、あんなに子供の勉強に関わる母親…

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「全然気にしてないよ!だって、うちなんか澄ちゃんの家に比べたら貧乏百姓なんだから」私は家で両親が言っていた言葉を思い出してそう言ったミクちゃんは「ううん、うちのお兄ちゃんより花ちゃんの方が頭がいいっておじいちゃんが言ってたそう言うのって貧…

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それ以来、村の誰彼に会うと澄ちゃんの母親は「花ちゃんって子は抜け目がなくてこまっしゃくれている」そう、吹聴して回っているようだった私は全く気にもしなかったし村の人間は、澄ちゃんの家の父親には何かとお世話になるから『うんうん』とは言っている…

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私は、すぐに澄ちゃんのお母さんの前に飛び出すと「ごめんなさいおばさんのせいじゃないの澄ちゃんの方がすっごく頭がいいよ!私帰るから」そう言うと、二度とその家には行かなかった夏休みが終わって、その中学生が帰る前に私に入らなくなった教科書をくれ…