その先

私は躊躇なく押してみた

この年になると、躊躇したり

している時間はない


「どなたですか?」


チャイムを押して、ドアホンから

出てきた声は澄子ちゃんだった

すぐにわかった

もう、何十年も前に聞いた

あの声だった

もちろん歳は取っていたが…


「澄子ちゃん?」


その、声で澄子ちゃんも


「あ、花ちゃん!」


そう叫ぶと飛び出てきた

私と同様、シワのよった

お婆さんになっていたが

私には小学校の頃の澄子ちゃんに見えた