2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

低い山々

それは、十数年前のことで今、その子供がどうなっているのかも知らない自分の興味は子供達の進学や就職の心配だけで一流大学を三人とも卒業して一番下の子供が、一流企業に就職して、趣味の料理に没頭した料理は好きだったが子供と同居している間は好きなも…

....の無い

冷蔵庫からビールを出すと 居間に座ってテレビを見始めた 年取ったな、そう思いながら 胃に優しい豆腐のつまみを さっと作った 金色に近い茶色の髪は 汚らしくの伸びている それでも髪を切らないのがこの人だ 同じ年齢の女の人よりも 老けて見える肌の荒れ方…

低い山々

もちろん、普通の生活や国語に関してもできなくは無いが公立の小学校に行く普通の子供でもすぐにできるようなことがなんども繰り返さないと理解できないそして、すぐに忘れるそれでいて、本人が気に入ったことに対する集中力はこの年代の子供には珍しいほど…

.....の無い

「引っ越したんだね~ 隣のせいさんに聞いてびっくりしたよ 康太はどこ行ったの? 立派な大学に入ったそうじゃない 会って見たいわ~」 早速そんな事を言う 「康ちゃん、私にも何にも言わずに 出て行っちゃったから知らない」 「ふ~ん、そう。 冷たい子だね…

低い山々

算数はもちろん、体育、音楽国語以外はよくできる小学校も慣れるに従ってなんとか、他の子供と同じように生活できるようにはなったし机に一時間近く座ることもできるようになったただ、やはり、普通では無い親が心配して心療内科に連れて言ったところ発達障…

......の無い

康太は母親を許そうとする ミキすら嫌いになりそうになって そこを離れた ミキは沢村が会いたがっていると言う話に 心を占められていた それだけで、十分だと思う 沢村はあの頃はいかにも大学教授のような 文学者だったが 小説が売れてからはメディアも注目…

低い山々

ママ友たちも何かと慰めていたが幼稚園は無事に合格したが小学校受験は無理だった無理だと言っても私立の付属の幼稚園だからなんとかお金で解決したその頃でも机につくこともできずなかなか、指示通りに動くことはできないしかし、いわゆる勉強はよくできる…

......の無い

ミキは少し笑いながら 「さぁ、好きに生きて楽しいんだから いいじゃない とにかく、あなたは 知らないふりしてればいいし ここにはもう、来ないで 私もあなたのことは教えないから」 康太は自分が卑怯者のような気がして 胸が苦しくなる 小学生の頃、頑張っ…

低い山々

このレベルの子供達で幼稚園に入る前から椅子に座っていられない子供はまず、いないその三人の子供の家も上の二人は幼児教室でもいつでも、きちんと先生の言うことを聞ける子供だったそれが一番下の子供はまず、二歳から入れた幼児教室についていけなかった…

......の無い

ミキも沢村と会う前なら そう考えたかもしれない でも、自分があの母の子供に生まれた以上 何も変わらないし 沢村と一緒になることはおろか 横に並んで座ることすら 自分の気持ちが平らなまま会えはしないのだ そして、沢村と会えないのならば 自分はどんな…

低い山々

子供たちの教育にはかなりハイレベルなものをと幼稚園受験から小学校受験と走り回ったそんな時に出会ったママ友たちも当然同じような家庭環境で子供の教育にはお金に糸目をつけないそんな家庭のママ友がほとんどだったそして、子供達は当然親のDNAを受け継い…

.....の無い

しかし、その笑顔はすぐに消えた 「そう。でも、ちょっと、最近 色々あるから......」 そう言うと困ったように 康太から目を離した 康太はすぐにピンときた 「母さん?」 ミキは答える代わりに お茶を入れようと立ち上がり なんでも無いことのように 「うん…

低い山々

それが全て終わった時にそこから学んだものは人の心と成長の妙であった人間の脳の記憶と思考力とそれを促進する感情その三つの関係性に心惹かれその三つのバランスが素晴らしい人間を作るそれに気がついた時に度々かかってくる故郷からの電話それは、今まで…

.....の無い

沢村の小説のヒロインがミキだと思うと 物悲しいような それでいて晴れがましいような 「姉さん、沢村教授が姉さんに会いたいって 言ってるんだ」 そう、まっすぐに切り出した 会ってほしいような 会って欲しく無いような でも、康太には決められない あの、…

低い山々

盆地の中にはポツンと自分がいるようなそれでいて、まだ何かやり残しているような細い手を握りしめながら涙が流れて来て長いこと目を背けていた母を見つめたあ.....何かが違う痴呆の老人たちには取材で嫌ほどあった介護で苦しんだ話も嫌になる程聞きまとめた…

.....の無い

心の奥底ではわかっていた 姉が沢村教授を知っていること 沢村教授の小説の主人公は ミキとしか考えられないほど よく似ていた 沢村教授が言うところの康太の横顔 ミキが少し考え込みながら 憂いを持って少しうつむく時の あの、美しさは康太が一番よく知っ…

底から

一番底辺だった自分の生まれ東京に来て四十年その底辺から登ることだけを考えたそれがうまく言ったとは思えないがもう、限界であることは、黒く、立ち並ぶ高い建物そして、高校の頃の自分のまま周りの人間に馴染めない自分それは、自分の戦いが終わったこと…

.....の無い

沢村は確信に近いものを感じていた あの時、翔子が偽名を使っていたこと そして、康太に宿る翔子の面影 その時間の流れもぴったりと会うし 翔子があれから何をしていたのか それは康太に聞いた話にぴったりと合う そんな人間だった 「ねぇ、沢村教授ってやっ…

家に帰れば夕ご飯を食べそして、風呂に入り適当に心にかかっている宿題をやってそして、ラジオを聴き漫画を読み、小説を読む高校時代に一緒に住んでいた家族の様子を描写することはできない公務員の父、日雇い土方二出る母親五つ下の弟は小学生興味は全く家…

.....の無い

「ああ、戸田君によく似た女の人 美しい人だったし 沢村教授の描写通り いや、もっと、雰囲気のある人だった あれは、沢村教授の描写力の無さかな」 そんな事を言う 康太は沢村教授の自分に対する親愛 それを、この言葉でもう一度実感した 「あの、それで、…

空の色

故郷の空は当然美しくなければならないその思いがここに帰って来ることを阻み続けてきた東京では決して見ることのできない盆地を囲んだ青い空、そして高い雲この盆地を見下ろす小さな山高校の頃の一番純粋だった私はクラブ活動で毎日あの山の頂上まで走って…

.....の無い

「でも、まだ、遠くから拝見しただけです」 康太は珍しく積極的に、この女の子のために何かをしてあげたいと思ってしまった 「じゃ、教授に会ったら紹介してあげるよ」 そう言って地下の食堂に行くと 珍しく木原先輩が隅の隅で パソコンを打っていた 「あ、…

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康太はその時に、その彼女に惹かれた 「あ、木原先輩って神出鬼没だから 先輩が現れそうな所、一緒に回ってあげるよ」 そう彼女の背に言いながらついて行った 友人は呆れながら苦笑いした 「康太。ひとめぼれだな」 康太は彼女に追いつくと 「まずは、地下の…

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「沢村教授のおっかけかぁ」 「その言い方はカチンと来るけど まぁ、いいわ! ちょっと聞きたいんだけど あの小説の中のこのシーンって 実際に沢村教授と彼女が 共有していた思い出って本当?」 二人ともそんなことは知らなかった 「そうなの?」 「知らない…

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「沢村教授に憧れてこの大学に 入って来た私にとっては 素敵な現象だと思うわ それに、あなたたちは 気がついていないかもしれないけど ここに来るカップルは どこかの島の恋人岬に行くような 軽いカップルじゃ無いのよ」 二人が振り向くと 多分、今年入った…

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その頃、大学構内で 流行っていることがあった ここの学生というよりも 外部のカップルが 沢村の小説を読んで 聖地巡礼でもするように あの銀杏の並木道で一緒に 珈琲を飲む 友人が康太に 「なんだか、いいのか悪いのか 俺なんか年齢イコール彼女無い暦だか…

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それから、ひたすら、ミキを手放しで褒める話を聞いた 康太にとってはあの、姉ならばと 当然と受け止めたが 考えて見たら、 それが未成年の頃だっていうのが驚きだ 「で、お父様が亡くなってから、 どちらに行ったのでしょう?」 そこは二人とも全く知らなか…

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康太はこれだと思って 慌てて 「すみません、つい、話が耳に入って来たものですから、もしかしたら、その女の人が 僕の探している人かもしれないので その人はどんな感じだったんですか?」 その話をしていた男二人は 最初面食らったようだが 「ああ、いや、…

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「ま、しかし、あの後 ミキちゃんの母親も捨てられたって 話だったからな どっかの社長さんが身請けしたって話 身請けって言っても、妾にしたとかそんな 話じゃ無いって聞いたけど 蒲田あたりでチラッと見たやつがいて 事務の職員のような格好していたって …

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そのマスターは康太が聞くまでもなく 「それでさ、ミキちゃん、消えちゃったんだよ でも、この辺り一帯の人間は ミキちゃんをかわいそうだと思ってたから あの男も母親もいいきみだと思ったけどね ミキちゃんってあの店で仕事してても 質素な誠実そうな子で…