2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

そこから

長い夢から覚めたような気がした それでも、自分の環境にあらがって今の仕事について 良かったと思い、ミキに感謝し 離婚してからはミキがたまに家にやって来て 昔ながらのミキと康太のカレーを作ったりしてくれた そんなときに受けた仕事がちょうど離婚調停…

発達障害の母

ボケた三ちゃんの母親は 断片的にあの頃、爺さんには手を焼いた!夫が考えた! 火が回ってどうしようもないと思った! 三ちゃんの子育てに疲れていた! 自分が手でしっかり押さえていた三ちゃんに 『福が鎖につながれたままだ!このままだと焼け死ぬ!』 そ…

康太の深淵

「いや、攻めているんじゃないんだ 妻に見せたら、結婚には絶対反対だったろうけれど 私は幸せに裕福に育った妻 そして、彼女にたっぷりと頭の悪い愛情を注ぎこまれた娘 そんな人間よりも、よっぽどいいと思うよ それが言いたかったんだ うちは、あの二人で…

発達障害の母

あのお葬式 たぶん、誰もが悲しみ、誰もが彼のために泣いていたが 誰よりも尊敬していたのが私だとは 誰も知らなかった それも、鎖でつながれていた犬の福ちゃんを助けに戻って 焼け死んだと聞いたとき 私は涙が止まらなかった 「え?あれは寝たきりのじいち…

康太の深淵

「あ、でも、僕はそんな妻が理想だと 結婚前までそう思っていました 母が全く反対の人だったんで」 父親は少し困ったように 「知ってるよ 私は君の経歴があまりに立派なんで 悪いけれど調べさせたんだ 育った町、あの辺りは貧困層の多いところで ヤンキーみ…

発達障害の母

私はどうしても小学生ながらも母と比べるからだ 同じような感じなのに、心が美しいだけで どうして、こんな何だろう? 母も実際、小学校四年生くらいの知能指数 本を読ませても、三ちゃんとほとんど変わらなかった でも、ちょっと厚化粧をしたお金好きの母は…

康太の深淵

「僕はね、長い間、妻が嫌いだった いや、今もだ そして、妻の作品のようなミツホを 可哀そうに思っていたんだ もっと、早くに離婚してミツホは僕が育てればよかったと そう、思っていたんだ」 「え?」 「でもね、それなりの会社に勤めていて 上司の親族関…

発達障害の母

三ちゃんは皆から大っぴらに馬鹿だと笑われていた だからと言って三ちゃんのことを、誰もが好きだった ネコですら馬鹿だと笑っていたが それで、バカにしているわけではなかった 三ちゃんは本当に心がきれいだったからだ 昔の私が通っていた小学校には特別学…

康太の深淵

父親は鍵を返しに来たと言いながら 上等なウィスキーも手にしていた 「ミツホのことは妻以外の人間と 一度ゆっくり喋りたいと思っていたんだ」 康太は正直、迷惑だと思った しかし、自分が悪いのだから さっさと軽いお酒のつまみを作った 「やぁ、すごいな …

発達障害の母

私は母のことをなんとかかんとか悩みにしながらも 期待はしているのだ 16の時から母に対峙したことなど一度もない だから、発達障害であるにしても かなりの確率でまとも寄りであると思いたいし 今まで、すこし、私自身が悪く思いすぎていたんじゃないかと…

康太の深淵

みぃと速水 康太はこの二人のこともミツホに話したことがなかった まぁ、この二人のことがわかっていれば あの母親は結婚させなかっただろう 最初から全部話せばよかった しかし、こうして姉が喜んでくれるのならば まぁ、よかったことにしておこう そう思っ…

発達障害の母

母には物をあげることによって 友人だと思いたい人間がたくさんいるし その人たちがすべて母から物をせしめることを 目当てにうちに来ているとは思えないが 私が自分が子供の頃には買ってもらえなかったお雛様 母ももちろん買ってもらっていないからと 少し…

康太の深淵

沢村の言葉に康太は頷きながら 「今ならば、そう思うこともできますよ でも、子供の頃は違っていた 姉さんと普通ってものになるのに 一生懸命だった 大学に入って、ミツホに会ったとき なんだか、普通以上の幸せな家で育った 理想の相手に思えたんです そし…

発達障害の母

母はたぶん、自分が普通ではないことに気が付いている しかし、それを容認する自分には耐えられないのだろうし みんなが母に対して、少し足りないと思いながら接するのを 物をあげることでカバーしようとしている 私が送って来たもの、弟の家が送って来たも…

康太の深淵

ミキは康太に昔ながらのミキのカレーを出しながら サラダとヨーグルトを添えながら 「あの頃って、カレーには肉が入ってなかったし サラダやヨーグルトを添える経済的余裕はなかったわね」 夫の沢村は 「僕はそれでもかまわないよ カレーだけが好きだから」 …

発達障害の母

私はあの頃のことは忘れていない 自慢ではないが私は田舎の小学校の中では 群を抜いて絵や作文がうまかった それで、学校を代表して何かと表彰されたものだった 同級生は皆、その作品を見たり 普段の私の成績を知っているから納得してくれるのに その子たち…

康太の深淵

それでも、康太はミツホとのこの関係を やっと終わらせることができるとホッとしてもいた ミツホの母はミツホを実家に連れて帰り 早速、離婚の手続きを始めた ミツホの父親はあれ以来何も言わないまま ミツホの母に慰謝料などもらうな そう言ったらしい ミツ…

発達障害の母

母がいなくなれば、私はここには帰ってこない ここに、何か私の興味をそそるものは何もない それならばできるだけ深く付き合うのはやめて そう、考えているのに 何かと村の人たちの好奇心の対象になっていて 遠慮なくやって来て私の近況を聞くおばさんたちは…

康太の深淵

そのことの繰り返しの毎日 康太は自分がDVの夫であることに 嫌気がさしながらも こうして手をあげないと、ミツホの失敗を許すことができず ミツホも出平手でたたかれるくらいならば そのあとの康太に抱かれることの楽しみがあるから そう、傷ついてもいなか…

発達障害の母

本当は16の時にこの村を出て 母からも離れて、 世間の一般常識とかワイドショーの基準のようなものに どっぷりつかって生きてきたし 16の私には村の卑猥なところなんかまったく見えてなかったから かなりショックなのだけれど それはうまく隠した 隠した…

康太の深淵

思わず、 本当に思わず そのミツホの顔を平手で叩いた ハッとしたのと後悔が一緒にやって来たが 口は 「女なんかいるわけないだろう!」 そう言って怒鳴る すると、ミツホは康太の胸に飛び込んできて ごめんなさいごめんなさいと言いながら 涙を流す 康太は…

発達障害の母

少し笑顔がこわばりはしたが 私は笑って 「わかってるよ 私がこの村を出てから長いと言ったって この村に16までいたんだよ それが、そんなに深刻なことじゃないことくらい わかっているから、安心して」 「そう、よかった この村では不倫や浮気で済むなら …

康太の深淵

仕事にのめりこみ、家には帰らなくなる 家に帰らないと、家事をどこまでやればいいのか 食事は二人分でなければ、いったいどうすればいいのか そんなことの調整のつかないミツホはだんだん、家の中を ぐちゃぐちゃにしてしまう 久しぶりに帰って、家を見れば…

発達障害の母

冷静に考えれば何も悪いことではない 警察に捕まるような話でもなければ 誰かが傷ついたとしても、舌打ちくらいで済む そんな純粋さはこの村には一つもない 奥さんが一範に抱かれても まぁ、仕方がない すぐに離婚だの不倫だの騒ぐのは 東京の進んだ人たちだ…

康太の深淵

康太は姉のミキが家族の 特に康太のためには心を砕いてくれて 食事も本当に心を込めて作ってくれていた幸せを思う 勉強で疲れた時にほんとうにちょうどいいタイミングで 軽い食べ物を作ってくれたり 中学に入るまでは勉強するべき問題集を ひたすらコピーし…

発達障害の母

数日後、いつもの喫茶店でネコに会った 「ああ、なんか、恵子が感謝していたよ さっそく週に三日塾に通うことにした まぁ、恵子にしたらこの村では心配なことが多いし 樹奈がやりたいって言ってるし ありがとう」 「ああ、うん。 まぁ、樹奈ちゃんのためにや…

康太の深淵

母のことでは答えが出ていたのに 今はミツホに子育てができるんだろうかと心配になる 毎日、マニュアルのような家事のやり方では くつろげないし、今、ミツホがやっている一つ一つが 彼女にとってかなり負担なのはわかる これに子育ては彼女にとってはもっと…

発達障害の母

村中の盛りのついたおばさんの相手 そんな噂から私は勝手にもっと、汚れた人間を想像していたが その真っすぐな瞳と、その奥の女ってものをよく知っているという まなざしが、あ、この子だ!そう気が付かせた 「かずのりくん?」 「うん。あそこのばあちゃん…

康太の深淵

子供は作れない そんな気持ちになった もちろん、結婚する前にミキにその、恐怖は話した いや、ミツホのことではない 万が一にも母のような女の子が生まれたら....... 考えただけでもおぞましい ミキはみぃのことや自分の娘のことを考えると その恐怖は確実…

発達障害の母

千枚田の丘を歩きながら 思いつく限りの汚い言葉を口にした 「あの糞ババァ、ほんとに、死ねばいいのに なんで子供を産もうなんて考えたんだ! 能天気にあの顔をさらして生きていけるなんて 信じられない!」 そんなことをぶつぶつと言っていると 後ろから突…