康太の深淵

父親は鍵を返しに来たと言いながら
上等なウィスキーも手にしていた

「ミツホのことは妻以外の人間と
一度ゆっくり喋りたいと思っていたんだ」

康太は正直、迷惑だと思った
しかし、自分が悪いのだから
さっさと軽いお酒のつまみを作った

「やぁ、すごいな
うちではこんな気の利いたものが出たことがないよ」

「いいえ、うちは姉さんがうるさかったから
手を抜かないように、気を付けてるんです」

「いや、ミツホがこの間から、家にいるだろう
なかなか、料理が上達していて驚いたよ
うちの妻は、君が相当な特訓を暴力でやらせてるって
怒っていたよ」

「あ、まぁ、そういうことです」

「いやいや、僕はね君の勇気に感心してるんだ」

「え?」