その先
私の父親が同級生で
仲が良かったこともあって
夏休みのある日
「あれは嘘なんだ」
そうポツリと入った健二の言葉が気になって
誰もがいなくなった時に
「健二、何が嘘なんだ?」
「兄ちゃんが父ちゃんたちの夫婦喧嘩に
巻き込まれて死んだって話
父ちゃんは酔っ払って
どうしようもなかったし
母ちゃんは怖くて何もできなかった
その話のことだ」
その話だけでも村では
どうしようもない夫婦だとなっていたのに
他に何があるんだ?
「父ちゃんは一升瓶の割れたものを
母ちゃんに向かって投げたんだ
思いっきり!
母ちゃんはそばにいた兄ちゃんを
盾にしたんだ!」
父は恐ろしい話だと思ったが
簡単に他の誰かに話していい話でもないと
黙っていたらしい
この話は父が病気で入院して余命幾ばくもないという時に聞いた話だ