2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

街の灯り

母の若いころの話など 聞いたこともなかったし、聞きたくもなかった 祖母の話もタブーだったし 写真すらなかった 「私、お母さんの若いころ初めて見た お父さんは中学の卒業写真を大事にしていたから その頃は知ってるんだけど」 「おばあちゃん、綺麗ですね…

発達障害の母

私は長いこと都会生活をしていたから 母にめったなことは言うものじゃない そう言う言葉が出てくるのだが 雅ちゃんが舅を見殺しにしたようなことを 気軽な世話ばなしのように聞いたことを思うと 母のほうが田舎の常識に添っている気がした そhして、そうい…

街の灯り

沢村が手に取り うらやましそうに、その写真を眺める 「うちの両親の写真は一枚もないんだ 父さんが絶対に写真なんか取らせなかったのもあるけど あの頃の愛人の仁義みたいなものを母は守っていて 二人が付き合っている気配を残したのは 僕だけなんだよ まぁ…

発達障害の母

女が子供を産まない選択がまかりとおる 東京での生活が長すぎて忘れていたが ここでは子供を産むってことは賢いってことよりも 人として立派だってことよりも 何よりも評価される世界なのだ 母の言葉はそんな村の人全体の言葉に聞こえた 「あの、みっちゃん…

街の灯り

「ママは小さい時におばあちゃんに連れられて 家を出たから、あまり覚えていないんだけど 写真はおばあちゃんが大事に持っていたって おばあちゃんは随分、男好きな人で それに付き合わされた家族は大変だったけど ママはおばあちゃんとの生活、楽しかったっ…

発達障害の母

「雅ちゃんの話聞いたかい? 首くくって死んだんだってさ 罰当たりなことに あのお宮さんでさ 村で折角、お金集めて建て替えたのにさ あそこで自殺なんかしたんじゃ 誰も寄り付かなくなるよ 子供も作れない女の最後はあんなもんさ」 母の言葉に普段なら 余計…

街の灯り

「この家は僕の母が住み始めた家でね 父、あ、認知だけしてもらった父だけど その父の趣味がすべて詰まった家なんだ 母は父が好きでたまらない人だったから 父が死んでからもすべて、もとのまま 庭のアジサイ、雪柳、梅、すべてそのまま 昭和のままなんだよ…

発達障害の母

ネコはすぐに同意してくれた 「そうだな、ほんとそうだよ 雅ちゃんには雅ちゃんなりに貫きたい人生はあったんだよ」 「あの旦那、わざと子供作らなかったって噂だぜ ひどい話だよなぁ あそこのばあちゃんもすげぇけど そんで、みっちゃんとこの後家が雅ちゃ…

街の灯り

そんな休日にショウはやってきた 正二にそっくりだった 「こんにちは 初めまして、僕、ショウです」 あの、屈折して、卑猥な世界だけしか知らずに育った 正二の顔をして、ショウはさわやかにやってきた 部屋に通すと物珍しそうに見回りながら 「素敵な家です…

発達障害の母

「東京で借金こさえて帰ってきたとか 離婚されて逃げて帰ってきたとか やっぱり、あの母親に似ているから馬鹿なのだとか あんなやつのために泣いてやることはないよ 嘘ばっかり村中に流してたんだから」 私はやっと、涙が止まり 少し笑いながら 「その、最後…

街の灯り

夫の休みの日 古いこの家でのんびり二人で過ごす ミキは速水がいた時と同じように ケーキを焼き、コーヒーを淹れる 沢村はそれを楽しみに居間で本読みながら 焼き上がりを待つ 居間のテレビはずっと、付けっぱなし 速水のコンサートの映像がずっと流れている…

発達障害の母

「それで、その足元に離婚届の紙が落ちていたんだ もちろん、旦那のサインいりのさ」 ネコが 「それで、もめてるんだよ お互い遺体を引き取りたくないってさ 俺が出て行って引き取って、何とか葬式出してやってもいいんだけど それも、年寄りたちが、出しゃ…

街の灯り

それが自分たちである必要はないじゃない ずっと、そう思っていたのだが みぃや速水のようにそこに才能が有ったりする いや、その世界でしか生きられない自分たち 速水がそこでのびのびと楽しく生きていることを思い みぃがそこであっけらかんと、何が悪いの…

発達障害の母

私にとっては少しも興味のない相手で あの時、ここで話した限りでは 小学校のころから全く変わっていなかった そんなことを思いながらコーヒーを飲んでいると ネコと友くんが喪服で入ってきた 「まいったな~ 雅ちゃん、かわいそうにな~ 誰も遺体を引き取り…

街の灯り

みぃのいうことはよくわかる ずいぶん昔だが、自分が風俗の女であったから そんな小汚い世界の女であったから ミキに救われた人間だっていた 性に関しての悩みや汚さ怪しさは まっすぐな明るい世の中では解決できない ミキの手を握りながら泣き出し 妹に手を…

発達障害の母

次の日、店に行ってみると 珍しく友くんは来ていなかった 「何かあったのかしら?」 コーヒーを頼みながらマスターに聞くと 「あの、雅ちゃんが自殺したって」 「え?」 私は立ち上がって、行かなきゃと思ったが すぐに、いったいどこにって思いなおした こ…

街の灯り

みぃは笑いながら 「まぁ、色々あって、私が無理やり 押し倒したのよ! そしたらその一回で赤ちゃんができちゃった」 ミキには何も言えない みぃが好きになった気持ちはよくわかる 正二はいい人だっただけでなく 男としても魅力的な人だった 「ごめんね」 な…

発達障害の母

「楽しかった?良かったわね~ 子供のころからの親友っていいわねぇ~」 そんな風に機嫌を取ろうとする 私にしてみれば、今、話を聞いてみれば 友くんもネコも私が子供の頃悲観していたような ひどいことは思っていなかったし かなり同情してくれていたの知…

街の灯り

何事もまじめになることがなく 世の中をクラゲのように生きていて 莫大なお金を動かしているみぃが 珍しくまじめにミキを見つめる 「正二はお姉ちゃんのことが 本気で好きだったんだよ だから、私のことは本当の妹のように 大事にしてくれたんだけど」 それ…

発達障害の母

ネコはさすがに村長だ雅ちゃんが一人になってからもちゃんと食べていけるように仕事を考えてあげている「いや、ありゃ、仕事なんてできる状態じゃないぞ子供もできなかったし旦那にベタ惚れだったから立ち直れないんじゃないか」そんな話をして帰る雅ちゃん…

街の灯り

「いらっしゃい お姉ちゃん、寂しいでしょう? まぁ、ゆっくりしていってよ 速水は幸せに楽しくやってるからさ」 「ありがとう、速水のことは本当に 感謝しているわ それよりも、子供」 「あ~康太のところ? プレゼントしすぎたかしら? だって、本当にうれ…

発達障害の母

ネコは笑いながら 「俺だって、あんな爺ちゃんや父ちゃん 恥ずかしいだけだったよ 子供のころは村の誰彼に爺ちゃんが余計なことを言ってるのを 見るたびに、穴があったら入りたかったよ あ~ちゃんだけじゃないさ」 「ま、いいじゃん 二人とも死んじまったん…

街の灯り

こんな大事なこと、どうして話してくれなかったのか 康太も康太だ しかし、康太の気持ちはわかる 自分たちの血が流れる子供がいる それが女の子ではないにしても ミキに話しづらかったのはわかるが それにしてもだ 沢村と結婚して速水をみぃのところに送り出…

発達障害の母

雅ちゃんに最初に会ったからなんとく村中から下に見られているのは子供の頃から何十年立っても変わらないんだと母のことさえなければ2度と帰ってこないのにそう、思っていた気持ちがす〜っと消えていく友くんのことは気があう話しやすいやつだとそうは思っ…

街の灯り

「今、スイスの寮のある学校に行ってるよ 15才の男の子」 ミキは慌てて逆算してみる 今、その男の子が15才ならば みぃの16の時の子供ではないか?! あの頃、ミキは正二を思い出した 彼を信じてみぃを託したのだ 正二ならば間違いはないと、あのとき委…

発達障害の母

すると、ネコはおもむろに 「あ~ちゃんは、何かと苦労しただろう? でも、俺たちみんな、あ~ちゃんはあ~ちゃんだって 思ってたんだぜ 子供のころは親の噂話とか 子供に聞かせちゃいけないなんてこと 思う大人はほとんどいなかったからな 俺、あ~ちゃんの…

街の灯り

康太は少し悩んだ もう、あれから15年 みぃはこれからどうするんだろう 姉に話さないつもりなんだろうか そう考えていると その沈黙を不思議そうに 「あ、気にしなくていいのよ 康ちゃんのところのことは 康ちゃんさえよければ、それでいいんだし 子供を作…

発達障害の母

「馬鹿言えよ! 俺、結婚したの30の時 恵子は24だぞ!めちゃ普通!」 私は一瞬にタイムマシーンであのころから戻ってきた 「だって、恵子ちゃんって一年生の時の 天使みたいな時しか知らないから そうだよね、大人になってるね」 そう、言って三人で笑う…

「話は若いころに付き合った男の話ばかりで 私も、もう長くはないって思っても うんざりしてたんだけどね お母さん、一番、好みの男は康太だって話してたんだよ」 ミキの何気ない、そんな言葉に 康太は全否定しようとして 心のどこかに喜んでいる自分がいる…

発達障害の母

母は知的レベルは低いくせに 姑息な手段をとったり、人に取り入ったりすることは うまくできたりする そういうところ、娘であることが恥ずかしくなるのだが いっても仕方がないので はいはいと適当に返事をする それよりもネコと話しはしたが 子供がいるなん…