街の灯り

「この家は僕の母が住み始めた家でね
父、あ、認知だけしてもらった父だけど
その父の趣味がすべて詰まった家なんだ
母は父が好きでたまらない人だったから
父が死んでからもすべて、もとのまま
庭のアジサイ、雪柳、梅、すべてそのまま
昭和のままなんだよ」

その庭を歩きながら楽しそうにスマホで写真を撮っている

「速水がうらやましいな
僕のおじいさんもおばあさんも
そんな趣味なんか少しもない
日本で一番低下層の人間だって
ママに教えてもらいました
でも、僕はアメリカのスラムとかよりも
日本のそんな場所の風情のほうが好きなんです」

二人の後をゆっくりと歩きながら
正二そっくりのショウから目が離せなかった
ミキは驚いて彼の話を聞いた

「あ、そういえば、おじいさんとおばあさんの写真持っています
トラックの運転手だったおじいさんは
康太おじさんによく似ていますね」

「え?」

そんな写真、ミキですら持っていない