2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ミキの遺産

「それで、章子ちゃんはショックじゃないの?」 父親の実家が風俗と切っても切れない家柄だなんて もう、中年を過ぎた小百合よりも 女子高生の章子のほうがよほどショックな気がするのだ 「ううん。私と雅紀のなれそめは知っているでしょう? 雅紀はバカだか…

誘惑の花

京子とスピカの生活は楽しくて面白いものだった スピカは大人しい子供だった それは、本来、静かな大人しい子と言うよりも りさ子が言っていたような父親の暴力が怖くてかもしれないし りさ子も言うことを聞かなければ、 すぐに手を出していたのかもしれない…

ミキの遺産

章子はそのまま家を飛び出した そして、迷わず、速水の家に行った 話を聞いて速水は 「へ~小百合さんが探偵まで使って調べたの? それはまた、進歩じゃない それに、今、調べるなんて遅すぎね~」 そう言って笑った 章子のためにたくさんたこ焼きを焼きなが…

誘惑の花

コーヒーを飲みえると また同じように手を合わせて 「ごちそう様!」 そう言ってシンクに持って行った すると、後ろで 「ごちそうさま」 小さな可愛い声が聞こえ 皿とスプーンを持ってきた 京子は嬉しくなって 「偉いね~、ちゃんと全部食べたし ごちそう様…

ミキの遺産

章子は今まで母の怒り方は いつだって上っ面だと思っていた 祖母の踏襲、見栄、母本人のため そんな怒り方だったから 少しも怖くなかった でも、今は本気だとわかる 本気だけれど、それって間違いじゃん 父の実家の人たちの職業をあげつらい ショックを受け…

誘惑の花

小さいティスプーンをつけると すぐに食べはじめようとした 私は自分の前のコーヒーに 「いただきます!」 そう言って、少し大げさに手を合わせて 頭を下げた スピカはキョトンとしてそれを見た 私はにっこりした 彼女は少し笑って そして、スプーンを取って…

ミキの遺産

小百合は怒りで震えていた いったい、自分が今までやってきたことは何だったんだろう 章子に関しては口には出さないまでも 失望させられることが多かった だいたい、自分はお嬢様育ちで勉強はしなくてもよい そんなスタンスで育てられたが 今、章子が通って…

誘惑の花

冷蔵庫からオレンジジュースをコップに入れて持ってきた 「オレンジジュース好き?どうぞ!」 そう言って渡すと、好きなのだろう 嬉しそうにコップを受け取って ごくごくと飲んだ この様子だとお腹も減っているだろう そう考えると 「今から、お料理作るけれ…

ミキの遺産

母の言っていることは正しい 正しいけれど、別にいいじゃん それがすべてだった 母に言われたとおりのするのは、間違っていないかもしれないが 少しもやりたいことじゃない 小さなころから、そう、思っていたのだが だんだん、父も同じように考えているのを…

誘惑の花

スピカの寝顔を見ながら りさ子にいったい何があったのだろう? そう思っているとスピカが目を覚ました スピカは周りを見回して、泣きそうになったが 泣いてはいけないのを思い出すように ぐっと唇をかんだ ああ、そう言えば、夫がDVをすると言っていた 可…

ミキの遺産

小百合はその言葉で、突然切れた! 「何言ってるのよ! ママがどれだけ苦労したと思ってるの! 生まれて、2歳から早期教育の塾に通って 幼稚園のお受験して あの、小学校に入るのも、どんなに気をもんだことか それからも、お友達のこととか 中学に入ったら…

誘惑の花

心配にはなったが、それ以上どうすることもできずに ラインの交換をして、別れた それから3か月 何の音さたもなかったが、あれからうまくやっているのか 私のような田舎が一緒なだけのおばさんに 相談するなんて、思ってもいないのかもしれない 京子はそんな…

ミキの遺産

小百合が止める間もなく 章子はすらすらと読み進め 「へ~パパのお母さん? おばあちゃんて大変な人だったのね ミキおばさんもみぃさんも、そんな感じの仕事してたんだね 可哀そう! 中学卒業して、すぐに、売られたような物でしょう でも、そこで、のし上が…

誘惑の花

その少し、ずるそうに笑う顔 俊哉にそっくりだ 「どうするの?」 「おばさん誰にも言わないでよ!」 そう言って周りを見回す 「うちの東京に出てから、ずっと仲いい友達がいるんだけど その子の後輩がお金に困っててさ それで、バイトしてくれるって言うの」…

ミキの遺産

汚らわしい 小百合にはそんな気持ちが心にいっぱいに広がった 落ち込んで、夕飯の支度も忘れてボウっとしていると 章子が帰って来た あまりのショックで、章子にこの調査書の存在を知られてはいけない そんなことすら考えられなかったのだが 「あら、ママ、…

誘惑の花

今、京子がいる環境では、絶対に聞かない話だ 美奈子の顔が浮かんだ 美奈子に知らせれば何か、この孫のために動くだろうか? いや、彼女は絶対に動かないだろう 彼女は俊哉と結婚した所から悔やんでいるのかもしれない 俊哉は田舎では本当の底辺で生きていた…

ミキの遺産

彼が弁護士であるから、東大卒であるから 立派な家柄だと思い込んでいた 貧乏な家であったことは知っていたが それは小さいころから読んでいたお話のような 貧乏な少年が、頑張って立派な人になる そんな刷り込みのせいで 小百合は康太に恋をしていたのだ で…

誘惑の花

「あ、よかったら、ご馳走するから あそこで一緒に食べない?」 りさ子はこの知らないおばさんに警戒することもなく 「あ、助かる~ 旦那がお金入れなくなっちゃって、何か仕事探さなきゃ って思ってたところ」 京子はそれは大変だと思いながら ファミレスに…

ミキの遺産

小百合は一気に嫌悪感でいっぱいになった 小さなころから、水商売なんてところは 会ってはならないもので 小百合が生きる世界には必要なものではない 母も父も、祖父も祖母も、みんなそうだ いや、実際は違うかもしれないが そう思って生きているのだ 祖父の…

誘惑の花

自分のほうをじろじろ見ている京子に気が付くと にらみつけるように、通り抜けようとした 京子は慌てて 「あ、田舎の、…村の人間なの お母さんに元気かどうか見るよう 頼まれて、来たんだけど・・」 田舎の村の名前は、絶対だった そこの出身なんか、こっち…

ミキの遺産

母親代わりと言っても ミキは全く干渉しなかった いつも章子に温かいカードのついた 素敵なプレゼントをくれて、マネしたいものだと思いながらも つい、ごく普通のお返しとなった でも、みぃや速水の原点はそこにありそうで ミキの生まれた時から調べてみよ…

ミキの遺産

小百合は長いこと、康太の姉であるミキを尊敬していた 東大教授婦人、専業主婦、遊びに行けば完璧な 手作りのお菓子が出てくる お茶は庭のハーブで入れてくれる まず、その家が夫である教授の実家で 全く素晴らしい日本家屋だった そして、その中で昭和の頃…

誘惑の花

その住所を手に入れると、京子はすぐに 東京に引き返した 美奈子のような人は、良く知っている 京子の東京の友人にも数人いる 人生をマニュアル通りに生きている人 一番大事なのは自分で、間違いのない人生 困ることのない人生を送ることが正義だと思ってい…

ミキの遺産

小百合は今までずっと、康太の親族から 少しお客さん扱いされていたから 今の速水の言葉にビックリして 言い返すこともできずに 「あ、そうね、そうしてみるわ」 そう言ってそそくさと帰った その話を聞いた章子は笑いながら 「ガツンとやられたってわけね …

誘惑の花

俊哉が出て行った娘とコンタクトをとっていた あの俊哉が父親らしいことをしていた それだけでも涙が出そうになった 美奈子はいい人だったし、あの俊哉を更生させる力のある 真っすぐで正直で、 でも世の中の深い所には目を向けない人 それはある意、だめな…

ミキの遺産

小百合は何もかも知ったほうが幸せなんじゃないか あまりにも上っ面で人生を生きている いや、小百合の実家が、人生の汚いところは全く見せないように 育てたのかもしれない 汚い所ばかり見てきた康太の親族とは大違いだ 速水は時々イライラしてそんなことを…

誘惑の花

もう一度、田舎の友人を訪ねて その、娘がどうなったのか聞いてみた 田舎は誰もが何でも知っているのだ 「ああ、りさ子ちゃんね 美奈子さんは出て行った娘にホッとしたみたいだったけど 俊哉さんのほうが、コンタクトを取っていたみたいよ りさ子ちゃんも田…

誘惑の花

俊哉に会ってみたいと思っていた気持ちが まさか、死んでいたなんて!と言う気持ちになり そして、その娘に会ってみたい気がした 「さぞ、美しいお嬢さんだったんでしょうね」 美奈子は思い出すのも嫌そうに 「まぁ、旦那に似ていましたからね でも、男の子…

ミキの遺産

章子はこの話になると いつだって、半分本気で怒る 小百合に対して章子は少し小ばかにしたような そんなところがあるのだが 普段はまったく小百合を面白がってみている感じなのだ 小百合にしてみれば、何となく思ったことを口にしただけで あまり、深く考え…

誘惑の花

京子が丁寧に手を合わせると 「ありがとうございます うちのは若いころ、相当悪かったし 二番目の娘にあんなことがあったあと 何やかや色々あって 人にまた嫌われ始めてね~ 二番目の娘は私たちの子供にしたら よくできた子だったから うちの人も大喜びで期…