ミキの遺産

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小百合は長いこと、康太の姉であるミキを尊敬していた
東大教授婦人、専業主婦、遊びに行けば完璧な
手作りのお菓子が出てくる
お茶は庭のハーブで入れてくれる
まず、その家が夫である教授の実家で
全く素晴らしい日本家屋だった

そして、その中で昭和の頃ならば
日本女性の鏡のような立ち居振る舞い
そして、その優し気で儚い容姿

聞けば、二人は大恋愛の末に一緒になったと言う
若いころの小百合のあこがれそのものだった
二人はその大恋愛を証明するかのように
同じころ一緒に亡くなった

お話のような人生
康太はミキを心から尊敬しており
今の康太があるのはミキのおかげだと言う

小百合は単純にそんな人生を送りたいものだと思っていた
でも、どうしたらそうなれるんだろう?
康太に嫁いだばかりの小百合はそんな風に思っていたけれど
日々の生活、章子の子育て
そんなことに追われて、すっかり忘れてしまった
親せきとはいえ、ミキ夫婦は本当にひっそり暮らしていた
康太にほとんど母親代わりだったと聞いていた小百合には
意外なほど遠い存在になっていた