2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

姉のこと

誰かに自分の心の中に思っていることを すべてわかってもらえて そのことが、間違っていないことで 自分にとって希望になりそうなことで それに向けて、全力で協力してくれる 深い愛情を持って それが姉だった 康太がどうして、勉強で頑張りたいと思っていた…

魔女

彼女は少し顔を曇らせながら 「それに、あれは、嫌な思い出でね あの頃、地方から逃げてきた若い奥さんたちは 子供まで面倒見る風俗に入る人が多くて 私にはそんな、人の困った状況を利用して 商売している兄がいたの」 さらりと話したが、いかに昔のことと…

姉のこと

康太はため息をついた みぃは笑いながら 「お兄ちゃんの気持ち、わかるよ お姉ちゃんがずっと思ってたことと一緒だよね お姉ちゃんは小百合さんみたいに育てられたかったけれど 中学に上がる前からあきらめていた でも、お兄ちゃんには小百合さんのように な…

魔女

「くうちゃんとあのおばあちゃん そして、小さい赤ちゃんがいたわね」 「よく、覚えているんですね すごいです」 「あなたも年を取るとわかると思うけど 私みたいな年齢になると 昨日のことは忘れるけれど 数十年前のことを昨日のことのように 覚えていたり…

姉のこと

「お父さん、どんな子供時代を過ごしたんだろうね? 私はほとんど会ったこともないけど 大人しいだけの人だったんでしょう? あんな母親と結婚して、一生、トラックに乗って お金をうちに運ぶだけ そのお金で、お母さん好きな男と遊びまくっていた」 みぃの…

魔女

板橋の古い小さな一軒家 いかにも、あの時の代表が住んでいそうな家だ 持ってきた手土産の羊羹を見直して 少し奮発しすぎたかなと思った 出てきたのは80がらみの小さなおばあちゃん あの頃の頼れるおばちゃんの面影はなかった でも、上品で厳しそうな雰囲気…

姉のこと

「ねえ、そう言えば お母さんのほうはよく知ってるけれど うちって、お父さんの実家ってどこだったの?」 康太はそういえば、みぃは知らなかったはずだ 父が亡くなったときに、姉と二人で 父の親族を一生懸命探した 爺さんに父のことを聞くと、爺さんもよく…

姉のこと

「え?結婚?」 今、結婚したばかりで幸せの絶好調にいるみぃは 兄の結婚はうれしいが バツイチの理由を知っているので ものすごく驚いた 「うん。なんか、だんだん年を取ってきて 普通って言われている家庭を持ってみたくなってね それに、世の中にある、一…

魔女

学生の頃、バイトしていた場所にとりあえず行ってみた 驚いたことに、そこは大きな美しいビルになっていたのだが そこの3階に事務所はまだあった 訪ねて行ってみると、もちろんのことだが 知っているスタッフは一人もいなかったが 学生時代にバイトしていた…

魔女

あの頃、私がもう少し、世の中を知っていれば 彼女をもっと、早く助けることができたのに あのへんな格好をして、くうちゃんのそばに来て 大人しく何も言わないながらも、楽しかったという彼女 それから、彼女の店は私の家から近かったので よく飲みに行き …

姉のこと

綺麗ごとのまま結婚しよう そのあと、何があっても彼女ならば大丈夫な気がした 人間のむき出しの感情を出さない日常生活 それが、あまりに感情でしか生きていなかった 実家の人たちとの家族という形を否定してしまいたかった 話をし、食事を一緒にする 彼女…

魔女

そこから抜け出して、今はカラオケスナックを経営している あの頃の何も知らない学生だった私ではない そこにどんな想像を絶する苦労があったことを思うと 「よくまぁ!えらいわね~元気で会えて本当によかったわ」 瑞樹ちゃんは嬉しそうに 「うれしい! あ…

姉のこと

江戸時代から医者の家 小百合の兄が家を継ぐ予定だそうだ 今はまだ、父が元気で病院長をやっている 母親の家もまさに間違いのない立派なものだ 康太は彼女のプロフィールを見たときに こんなに立派ならば、お見合いなんて降るほど来るだろうに と感心したも…

魔女

「あの、魔女みたいな人は 人身売買専門のやくざの女 私は借金のかたに親に売られたらしいの その親の子とは全く覚えていないわ 3歳くらいのことだったから 気が付いたら、あの女に瑞樹という名前を付けられて 育てられていたのよ 育てられたって言っても、…

姉のこと

結婚を前提に付き合う そう考えてから選んだ彼女だった 今まであったどんな女とも違った だいたい、康太は顔がよくないと女を女と認めない そんなところがあった そして、それは康太だけのもので ミキの沢村もみぃの正二にも そんなところは一つもなかった …

魔女

私は学生時代の夏休みのバイトのことは 全く忘れていた しばらく彼女を見つめても、何も思い出せなかった 「そうよね~もう、30年以上前のことですものね でも、私、絶対忘れない 私の子供時代の唯一の幸せな数日間だったから」 新大久保のアパート そのころ…

姉のこと

すると、彼女はすぐに立ち上がって 「あの、大野です ごめんなさい 写真と違いすぎて、驚きますよね 私も嫌だったんだけど 母がうるさくて 母もひどいんですよ、あなたなんて そのままの写真載せたら、絶対に選ばれないわよって!」 少し笑いながら細い目を…

魔女

そのスナックには本当にいやいや行ったのだ 自治会の役員会が終わって ちょっと、カラオケスナックにでも行こうと言うことになり 私はそう言う時に断れるタイプではないし 他に用事もなかったので しぶしぶついて行った 役員のおじいちゃんの好きそうな40が…

姉のこと

店に入って来た康太に気が付くと すぐに立ち上がって、優しく微笑みながら お辞儀をした 紅茶マスターであるミキの友人の殿山は 彼女がハッと嬉しそうに顔が輝いたのはすぐに気が付いた 殿山はミキが生前、弟がちゃんとした家庭を持たないのが 心配だけど、…

魔女

あれが一体何だったのか? 火の不始末か何かで初老の男性が亡くなった 発見が早く、ぼや程度で済んだ そんな事件の認識だったが 今考えるとものすごく怪しい あの頃は世間のこと、ましてや犯罪のことなどわからないまま 数十年過ごしてきたのだが 私はこの間…

姉のこと

姉が好きな紅茶が好きな人 そして、そのカフェの優しい雰囲気が好きな人 かなり期待して会いに行った そこのカフェが混んでいることはめったにない 今も空いていて テーブルの一つに座っている女性がいて 他のテーブルは開いていた いつもの紅茶マスターが飛…

魔女

私はあの部屋に行ったことがある 焼死体が年齢の行った男性と聞いて そんな人がいたのかと不思議に思ったが 私が行った時に、たまたまいなかったのかもしれない 正野さんの父親だったのだろうか 瑞樹ちゃんのことが心配になって 「あの、瑞樹ちゃんは?小さ…

姉のこと

康太が婚活を始めたと聞くと クライアントから娘はどうかとか 知り合いにいい子がいる そんな話がたくさん舞い込むようになった しかし、康太は頑なに自分の周りからは選ばないと決めていた 今度、結婚する相手はまったく、生まれや育ちから決めたかった 知…

魔女

今から40年近く前の新大久保のあたり 東京に来て一番最初に借りたアパートでの出来事だった その夏の終わり そのアパートで火事騒ぎがあり 中で男の焼死体が見つかった それは、正野さんの部屋だったのだが 男は老人だったらしい さいわい、焼けたのはその…

姉のこと

康太は色々と動き回って いざ、自分から結婚相手を探すとなると 案外、あれはだめ。これはだめとなる 事務所のおばちゃんなんか 「ねえねえ、うちの姪なんかどう? この間大学を卒業したばかり 『私は一生仕事を続けるから 結婚はしない!』って言ってたのに…

魔女

くうちゃんがおばあちゃんのもとに帰った日 私は、果たしてこのバイトは楽だったのかどうか? 結局、くうちゃんがいあいだ、やるべき勉強はできなかった それでも、子供ってものがよく分かったし 料理もかなりできるようになり くうちゃんのお母さんも無事帰…

姉のこと

婚活をして、ちゃんとした結婚をして 小学校のころ、姉と夢見ていた家庭を築こう 今まで、恋愛というものに翻弄されてきた そして、本能のまま、好きになった人と結婚したり 暮らしたりして見たが やはり、恋が冷めると一緒に暮らすのはしんどい そして、ハ…

魔女

瑞樹ちゃんは少し汚れたTシャツと 黒いカボチャパンツをいつも着ているのだが 私たちと知り合ってから二週間近く ずっとその格好で、髪の毛も洗ってもらっていない? 下着すら替えてもらっていなかったようだ 子どもだから、匂いもそうきつくはなかったが …

姉のこと

康太は正解が好きだった 家庭に正しい家庭なんて答えがあるわけがないのに 世の中はそれを求めさせた 新聞を読んでも、テレビを見ても、同級生も 学校の先生も、すべての人が康太の妄想のような家庭を 正しいものとしているようだった そして、そんな不確定…

魔女

正野さんのような人と喋るのはストレスで 世の中に、文学や政治、歴史、 そんなことに全く興味を持たない人がいることを初めて知った 私の家では父が歴史が大好きで、だいたい、家族で話していると 気がつけば、そんな話ばかりしている 友人はだいたい本好き…