姉のこと

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「ねえ、そう言えば
お母さんのほうはよく知ってるけれど
うちって、お父さんの実家ってどこだったの?」

康太はそういえば、みぃは知らなかったはずだ
父が亡くなったときに、姉と二人で
父の親族を一生懸命探した
爺さんに父のことを聞くと、爺さんもよく知らなかった
自分のことはおろか、康太は父のしゃべる言葉を
一緒に暮らしている間、ほとんど聞いたことがないくらい
無口な人だった

母はとっかえひっかえ、次から次へと男を変えてきたのだが
父はそんな母に呆れることも嫌いになることもないまま
ずっと一緒にいたらしい

母の夫に慣れたことが最上の幸せだったんじゃないか
なんて爺さんがふざけて言っていたが
本当にそうかもしれない
数週間、家に帰ってくることもない
トラックの運転手か半場を流れ歩く、肉体労働者
家族が普通に暮らすのには十分なお金を家に入れてくれていた
母がそれを持って、たびたび家を出なければ
うちは普通の暮らしのできる家だったはずだ

「姉さんと葬式の時に調べたんだけど
ぜんぜん、わからなかった
天涯孤独だったんじゃないかな~
だいたい、爺さんも母さんも、何も知らなかったんだからな」