その先

その中学生の名前も忘れたが私は彼の持ってきた本をまぁちゃんから見せてもらったそしてその中学生に「この子、この村でいちばんの天才この本スラスラみ読めると思うよ」それは山岡荘八の『徳川家康』だった私は父の本の中にそれを見つけて面白さに時間を忘…

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一年生の夏休み近所の家に都会からやって来た中学生がいた村のものには分からなかったが中学は公立とかでは無く開成中学だとその親戚は自慢していたがその事の価値など誰も知らないそれが、澄子ちゃんの家だけはそれがどれだけ凄いことか、よく知っていたそ…

その先

アイウエオや1足す2から始めている澄子ちゃんに比べてずいぶん難しい本を読まされていた私は元々、そう言うことが好きだったこともあっていろんなことをどんどん覚えて教え方が下手で、あまり知識のない母親に愛想を尽かし、そのうち父になんでも教えてもら…

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田舎の農家の子供である私にはいや、私だけじゃない誰もが驚いたでも誰もが「やっぱり、都会から来た人は違う!」そう言ったものだったが私の母は違っていた「うちも、幼稚園にはやれなくても舞にも同じくらいのことはしてやりましょう」父親にそういうと父…

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トミーはそれから来なくなった私としては寂しい気はするがそれよりも私にはやりたいことがあった私が東京に出てきた本当の理由私には小学校から中学までずっと、仲のよかった幼馴染みがいた澄子ちゃん彼女はうちの村に保険会社の出張所があった頃、私が小学…

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トミーも同じことを言う「ママって友達を大事にばっかり言うそのくせ、ママの友達っていないんだよ」私は笑い出して、トミーはきっと大丈夫だもし何かあったとしても仕方のないことだ私はそう思ったけれど「自分で計算して成績が落ちないようにちゃんとやり…

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トミーは「今の学校の勉強は簡単すぎるしみんな子供なんだ全然、話も合わないんだ」そう言って、私が読んでいる本を手に取ったトミーは私の読んでいる本が好きなのだ今、私が読んでいる本は息子が好きだった本でこういう所が血だなぁって思う史緒里さんはま…

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「学校に毎日行かないとダメかな?」私はこうやってトミーがやって来るのは嬉しい限りだが史緒里さんが知ったら烈火の如く起こるだろう「大学まで行きたいんなら学校に行かないで大検でも取ればいいけどそれは、ママが嫌がるだろう」私は自分が中学の頃を思…

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トミーは納得した「僕にはわからないけどパパがママを好きなのはわかる」「フフフ、恋とか愛は不思議でね欠点が魅力的に見えるのさパパは田舎で生まれて派手な女の子にいつも憧れていたけれど実際はクラスの隅で見ているだけだったんだでも、東京に来てママ…

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「勉強はパパに似てよくできるから大丈夫でも、友達はいらないからね」私は頷いた「わかるよ、でも、ママの見栄も考えてあげなよ!トミーが公立に変わったら赤っ恥をかくのはママだよママの友達関係はそれで成り立ってるからねトミーの方が大人なんだから公…

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「ママには逆らえない猫を飼ってはいけないとは言わないだろうけど、きっと、ママのおばあちゃんちみたいなすごく高い猫にするって言い出すよ何でも高けりゃいいって思ってるから」「それは間違いないよお金が高いほど、立派なものが手に入るのは確かだから…

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どこにも村はあるのだそして、自分の生活を大切にすればするほどその小さな枠の中での位置は大事なものなのだしかし、そういうことはトミーにはわからないだって、それはそうだ世の中あげて、自由が大事だ個性を大切にしろ人よりも自分が大事だ見栄なんかく…

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多分、嫁よりも息子のことがよくわかっていただろういきなり、都会のカースト社会の戦いに入っていくしかないそんな仕事以外のこことを心配した夫もそうだったでも、私には嫁のことが手に取るようにわかっていただって、村だって同じようなものなのだ村の中…

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私は嫁が嫌いなわけではない嫁は息子と所帯を持った時もとにかく一生懸命だ嫁の友人たちの中では息子は大学も職業も全く問題ない母親の私が言うのもなんだが見た目だってそこそこいいその証拠にトミーは爺さんに似てジャニーズに入ったって遜色ないはずだ嫁…

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「ほら、この道を曲がったところに動物病院があるだろうあそこからもらって来たんだよ捨てられた猫を動物羽病院が保護して引き取り手を探してたからね」「アインが欲しいなアインも僕のこと好きそうだよ」「おじいちゃんもそうだったね世話は私がするのに田…

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猫を抱き上げながら「いいなぁ、うちも猫飼いたいな」私は笑いながら「飼えばいいじゃないかお父さんは猫好きでね小学校の時に猫を拾ってきてずっと、飼っていたんだよそれが、初代アインシュタイン田舎で飼うにはハイカラな名前すぎる気がしたんだけどその…

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息子が結婚してすぐに胃癌で死んだだいたい、なんでもいじいじ考える人で結婚式に東京に出てきたときに嫁の家の立派さに驚いて息子はちゃんとやっていけるのか心配して息子の結婚以来、そればかりを心配していたそして、孫が生まれると大喜びしたが孫に、な…

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もちろん、私にそのつもりはない部屋を借りて、死ぬまでのお金くらいは贅沢をしなければ十分にあるその上、年金ももらえる嫁が一緒に暮らすのを嫌がるに決まっているのにやはり、私の息子は少し、バカだ生まれてから一度も村を出たことはない五人兄妹の真ん…

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その上、この近くのタワマンに住んでいる何かとお金がかかるに決まっている本人は絶対、専業主婦今時、専業主婦は絶滅危惧種なんて言われているが嫁のクラスの人間たちの間では当たり前のことで仕事をしているのは医者か弁護士の母親私も世間的には専業主婦…

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そんな風に固定観念を押し付ける間違った常識が、世の中に蔓延っていたそんな時代だった田舎の貧乏人は東京の私大になんか入るわけがない嫁は私たちの家を見てすぐに愛想笑いをしながら帰っていったそれでも、婚約を破棄しなかったのは息子を手放せないほど…

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うちの方はなんの問題もなかった内気でお金がない貧乏学生だった息子真面目に都会の誘惑にも負けないで大学でしっかり勉強し難関の大手企業の就職試験にもパスした私たち田舎の親はそれだけで満足でどんな女を結婚相手にしようが私らが口出す問題じゃないの…

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ちょうどその頃っていうのは見合いなんてダサい恋愛が素晴らしいそんな風潮だったバブルの頃で、やたら盛大な結婚式やトレンディードラマとやらで盛り上げて最後は結婚!なんて結末が多かったでも、冷静に結婚できる若い者なんかほんの一握りだから、この世…

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息子は田舎から頑張って勉強して東京の私大に入り努力に努力を重ねてなんとか大企業に就職したそして、恋愛をして嫁と結婚した息子は極々、貧しい農家の子供だただ、努力と頭が少し良かっただけだった東京の四年生の大学に行くために先祖代々、持っていた小…

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夫婦間の金銭感覚の違いは仕方のないことだ私が子供の頃はお見合いなんて風習があって親戚のおばさんが釣り合うような人を見つけてくれたものだ親戚筋が見つけてくるのだから近場で、どんな家柄かもわかっている家柄というと、たいそうな言い方になるうちの…

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8時になったら、学校に休むと電話をしてあげる「おばあちゃん、ありがとう」私が電話をし終わるとホッとしたようにコタツに入るそして、孫のトミーが大好きなアインを抱き上げる「あぁちゃん、おはよう!今日はふかふかだね」「今日は寒いからねいいコートを…

ひとつ先

朝からチャイムが鳴ったああ、またかそう思いながらカーディガンを引っ掛けてドアを開ける「おはようまた、ここにいていい?」孫のトミーは学生服を着てリュックを背負っているそして、弁当が入っているディーンアンドデルーカの黒い小さいバッグ嫁の史緒里…

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ああ、こういうことかそう思いながらベッドから起きた体はどこかここか痛い目もシバシバするし焦点も合わない歳を取るとそうなることはいやほど聞いていたしテレビでもスマホでもそんなサプリメントのcmか健康に関するバラエティばかりだでも、それを実感し…

刷り込み

キナは大笑いした「頑張ってない頑張ってない!転生の才能がある感じだったよ楽しそうだったし初めてメインで仕事したから緊張してはいたけどその辺の詐欺師よりかはよほど演技派!」貞丸は褒められている気はしなかったが確かに面白かった週一、4ヶ月で400…

 刷り込み

「キナは頑張ってる人に冷た過ぎだよ」キナはビールを飲み干して「頑張るっていいことなんかじゃないよ頑張ることがいいことみたいに言われているけれどその、頑張った人の気持ちに嫌な心が忍び込むんだよ園子ちゃんもただ、仕事を好きだから続けるっていう…

刷り込み

ここからは簡単だニューヨークから後400万あればすぐにいい物件が手に入るこれ以上、母さんには甘えられないそうメールする園子は疑うことなく、すぐにお金を振り込むこれで、今回の仕事は終わりだキナと貞丸は上野の汚い焼き鳥屋で祝杯をあげる「でも、少し…