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そんな電車の中だから誰それの鞄の中には、ラブレターが入っていたとか男子の噂に誰それちゃんが一番だと言われているとか毎日、恋の話で満開だったでも、私には関係ないこと毎日、電車に乗ったら英単語の暗記か夏目漱石や森鴎外の小説を読んでいたそんな学…

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高校時代の思い出は何もなかったただ、電車通学で父が最寄りの駅まで軽トラックで送ってくれる電車に乗ると、もう、満席になる程電車は混んでいるこの電車には県立の2校、私立の女子校の3校の学生が乗っている私が通っていた県立高校はもともと女子校で偏差…

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「うちは私に対して無茶言わなかったし私も親の言うことを聞いていれば平和で幸せだったかな澄子ちゃんは大変だったけど立派な息子さんもいてよかったじゃない」「良かったのかな?」「そう、こう言っていいものかどうかわからないけれど、お母様は亡くなら…

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私は他の頭のいい子達のような野望は全くなかった大学に行ったり、田舎の村を出たりそんなことはしたいと考えたこともなかった田舎にいて、毎日本が読んで暮らせれば何よりの幸せだった親もそんな私に満足していたし結婚だって、親が探してくれた人で十分だ…

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澄子ちゃんはひどく落ち込んでいた「私、どうして母の言うことを聞いて生きていたのかし?」「それは、ほら、信之君が学生の頃調べたっていう、あれでしょう仕方ないわよみんな、親を選んで生まれてくることはできないからね」「それはそうだけど花ちゃんち…

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あの、訳のわからないお婆ちゃんと関わって生きるより、よほど幸せでしたこうして、好きな仕事にもつけたしあ、もう直ぐ、結婚するんです結婚式にはぜひ、来てくださいね」全てが思ってもいなかった展開で澄子ちゃんにとっては幸せな話のはずだ生き別れた息…

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その人は病気で亡くなったそうだ横で聞いていて、なんと切ない話だろう澄子ちゃんは何も知らないまま全てが過ぎ去っていった唯一愛した人だったろうにあの母親の罪もちろん、そうならないようにあの人から離れる勇気は必要だっただろういくら、絶対君主だっ…

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「会ってみたら、物のわかる人で自分が悪かった反省している、子供は自分が育てようそう言ってくれたんだでも、私たちも育てたかったから父親として、何か必要なときには手伝ってもらうことで、話は決まったんだもともと、奥さんとはうまくいってなかったん…

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「僕、おばあちゃんにもあったんだでも、僕のことを『汚らしい不倫の子』って言って、目も合わせなかった。まぁ、そんな人だからお母さんが動けなかったんだってよくわかったし、父さんにはすごくよくしてもらった。今でもたまに会うんだよ」私は驚いて信行…

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「ごめんなさいお母さんに逆らう勇気も気力もなくてお父さん、あの時、私はついていくべきだったのね」「もう、過去のことは言うなよあの時はおばあちゃんがお前に無理を言ってどうしようもなかったくらいわかっている今考えたら、婆さんも母さん、そっくり…

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「色々、母さんも大変だったねおばあちゃんが最悪な人なのは父さんから聞いたし小さい時は、本当の母さんのことは知らなかったけど中学の時にしっかり説明してもらったし亡くなった母さん、あ、育ててくれた母さんだけど凄くいい人で、僕はたまに遠くから母…

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「妻が不妊症でねあなたの孫に当たるのならばぜひ育てましょうそう言ってくれたから、うちで育てることにしたんだもうすぐ帰ってくるから」そう言っている間に澄子ちゃんによく似た30前後の男の人が寿司桶を抱えて入ってくると「母さんが来てるって?お寿司…

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父親はすぐに思い出した「ああ、あの花ちゃんかぁあの頃からあいつ、おかしかったから随分迷惑をかけたねそれでも、ずっと友達でいてくれたのかありがたいことだ」いろいろ事情を詳しく話したかったが子供の話を聞いて澄子ちゃんが動揺しているので私が話を…

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長い年月、会わなかった二人の会話は落ち着いていたしその中に深い喜びを感じたわたしからすると、いい大人同士になった時にこっそり会ってもよかっただろうにそう思うが、ここの母の強烈さはそれすらさせないほどだったのかもしれないしばらくして父親が「…

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「確か、男の人私はてっきり、ご主人、あなたのお父様そう、思ったのですがお父様は?お聞きになりました?」私たちの中で、離婚した父親のことは全く頭になかったすぐに、澄子ちゃんは母親に隠していた住所を探し出した電話番号まではわからずそのマンショ…

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私たちは産院を訪ねたその当時を知っている看護師さんがいた「覚えていますよ!私も看護師になりたてで奥さんが同い年くらいだったので子供を取り上げられて毎日泣いていて、とても気の毒に思っていましたあの時のあなたのお母様、私は事情は知りませんでし…

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「それで、どうなったの?子供は?ここで育てたの?」澄子ちゃんは眉を潜めながら「病院で生まれたその日に母がどこかに連れて行って誰かにあげたらしいのそれ以来、私はその子がどうなったか何もわからないのよ」私は流石に堪忍袋の尾が切れた「何言ってる…

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「それで、どうなったの」私は、あの母親だし今まで聞いた話からもうまくいったとはとても思えなかった「それが、子供ができたのよ」「え!澄子ちゃんに?」もう、驚くしかない「ええ、でも、その人奥さんがいたの私も何も言えないまま別れたんだけどお腹の…

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「で?恋愛はしなかったって?」私が少し面白がって突っ込むと「この家でしょうここの庭は私や母ではとても無理だから季節ごとに庭師に入ってもらうの」え?それって、昔のお嬢様みたいな庭師の若者とって感じかしらそう期待してしまう「植物学を大学で学ん…

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「それからは私が仕事に出るのを嫌ってお金はあげるから、家に居なさいって言われて、今考えると私も母の言いなりになるなんておかしいとわかるんだけど当時はとにかく、母がそう言うのなら仕方がないって諦めていたのね」「お母さんは澄子ちゃんの結婚は望…

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「仕事は何をしていたの?」澄子ちゃんは恥ずかしそうに俯いた「最初はね母の希望通り大学を出て大手の銀行に就職したの」「まぁ、すごいわね!」「就職した途端に帰りも遅い、人付き合いもしなくちゃならないし、飲んで帰ることもあったんだけど母はそれが…

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「今時ならば、ネットとかでそう言うのを『毒親』って言うんだってすぐにわかるけどその当時、おばあちゃんは知らなかっただろうからね」すると、澄子ちゃんはガラケーを見せて「私がスマホを持つのも反対だったしパソコンだって家の中では禁止だったの長い…

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「そのうち、父が部下の女性と付き合っているのがわかって母は半狂乱!父は母と離婚してその方と一緒になるから、私にも一緒に来て欲しいって言ったのそう決まって、私もその方に会ってまるでお姉さんのように私に接してくれてすごく良い方だったわ私もそう…

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澄子ちゃんのその言い方に私はしみじみ「苦労したんだね。ご苦労さん」そう心から言ったどんな人生かはわからないがあの母親が先月まで一緒だったのなら澄子ちゃんの苦悩はよくわかる「あれから、東京のこの家に帰って私は中学受験をしたのでも、母の気にい…

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「まぁ、それはご愁傷様ご仏前にお参りだけでも」私は実はそういうタチではないのだが常識的な反応をしたすると、澄子ちゃんは「ないからいいのよ!お葬式も仕方なくやって誰もきてくれなくて父すら来ない葬儀で私は、やっと母からの呪縛から解き放たれたの…

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「なんか、変わってないわねぇ東京にはどうして?」澄子ちゃんは落ち着いた口調で言う私の方がドキドキしている東京に来た経緯を話すと「まぁ、じゃ、これからはしょっちゅう会えるわねお孫さんが中学生?いいわねぇ!私は結局、結婚しないでずっと一人」そ…

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私は卑下して生きてるわけではない澄子ちゃんよりは私が頭がよかったのは事実だが、村でもそうだ医者の家、村長の家、警察の家代々、その家の子が継ぐことが多いそう言う家は昔から部落の相談役のような役目をしていて東京で嫁の言うところのハイクラスな家…

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私はそれに対して反発していた澄子ちゃんの家は百姓の自分の家とは絶対に違うお母さんだって、うちの母親とは全く違ううちの母親がスカートを履くのは学校の行事の時だけだし化粧だって滅多にしない私の勉強だって見ないしテレビドラマを見るのが趣味の人だ…

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長い年月、会っていなかったけれどすぐに、お互い抱き合って再会を喜んだ急に止まった手紙!私たちはどちらも辞めたくはなかったのだ私はあの後、何度ももう一度出そうかと考えたが父や母が『東京のお嬢様とうちでは違いすぎるあそこのお母さんが許すはずも…

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私は躊躇なく押してみたこの年になると、躊躇したりしている時間はない「どなたですか?」チャイムを押して、ドアホンから出てきた声は澄子ちゃんだったすぐにわかったもう、何十年も前に聞いたあの声だったもちろん歳は取っていたが…「澄子ちゃん?」その、…