2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ミキの遺産

何でも考え方が康太寄りの章子にしたら 結婚するときに、仕事をしていたわけでもなく 自分の貯金はゼロ でも実家の親から5千万も持たされてきた母が 速水やみぃの財産についてとやかく言うのはおかしい だいたい、あの二人は働いて財産を築いたのだ その前に…

誘惑の花

京子は俊哉に恋をしたことはあるけれど 俊哉を愛したことはなかった だから、彼が何を考え、どんなものを欲しがり そして、どうやって生きてきたのかなんか ただ、懐かしむために知りたいだけで 本気で考える気はなかった その話の中の俊哉は、京子の全く知…

ミキの遺産

小百合は章子に少し嬉しそうに 「速水さんのところの、星人君 そろそろ有名になってるかと思えば 何の話も聞かないわね~ パパの一族ってお金はあるし 頭もいいんだと思うけれど なんだか、変わってるわ あの子も、音楽留学って言っても 何か賞を取ったとか…

誘惑の花

「え!」 「そう、それで、俊哉が怒っちゃって 学校に怒鳴り込むし、いじめてた子を付け回して 謝れって殴ったり 先生たちの家にも行って、脅したりしたらしいわ 数週間、そんなことが続いたんだけどね ほら、あの、星の見える丘 最後はあそこの気にぶら下が…

ミキの遺産

「やっぱり、そう言うことだったのね」 「そう、あの店で正二さんがお金を儲けて それを元手に株を始めて莫大なお金に増やしたのだけれど その、儲けたお金はお姉ちゃんが 障害のある人に優しかったから 口コミで、そのことが広がって お金のある障がい者な…

誘惑の花

「でもさ、所詮、最後から何番目ってレベルで合格したんだよね ほら、私らの学年でも びりに近い子は、不純異性交際とかバイト禁止なのに バイトしたりで辞めた子多かったよね それとか、一生懸命勉強しても 点の取れないことかいたじゃん あれと同じでさ、…

ミキの遺産

康太とみぃにその話をすると 康太は 「姉さんのことだから、その障害のある人に 何か優しく言葉をかけたんだろうな~」 速水はその時はそれにうなずいていたが 康太が帰って、みぃだけになると 「そうじゃないんでしょう?」 みぃに本当のことを聞いてみる …

誘惑の花

「え?何かあったの?」 「え~、あ、まぁ、全国ニュースになるほどじゃないか でも、この変じゃ知らない人はいないよ」 京子には想像もできなかった 「え?何があったの?」 「私たちが出た高校、あそこの下の娘はあそこに通ってたの 俊哉なんか中卒で、奥…

ミキの遺産

「私の父はいわゆる、障害がある人間で 生きていくことに絶望していました 祖父は半生のすべてを、父に捧げていましたが 父は死ぬことしか考えていなかったそうです 祖母に対しては なぜこんな体に産んだのかと ほとんど毎日のように責めて、祖母は精神的に…

誘惑の花

彼女は小太りのおばさんとなり 気軽に冗談を飛ばしたり、夫への不満を 面白、おかしく話したりして、高校のころとは ほとんど同じような明るい笑顔だった でも、京子は彼女と話していても 少しも楽しくなかった それは、この数十年の間、職場では戦いの連続 …

ミキの遺産

「あ、剣崎と言います あの、名刺を和尚に渡したのは 僕の祖父なんです」 速水は全く話が想像できずに コーヒーを入れて待った 「祖父はあなたのお母様であるミキさんに 深い恩義を感じておりました 一度、お礼ををちゃんと言いたいと思いながら あのあと、…

誘惑の花

俊哉はいったいどうしているんだろう? 田舎のいいお父さんになっているのだろうか? ずっと、この田舎を出ることなく 国道沿いにできたホームセンターでパートをしている 友人と食事の約束をした 「京子!ご主人亡くなったんですって? 大変だわね~ でも、…

ミキの遺産

それを見ても、康太もみぃも全く心当たりはなかった 首をひねりながらも もう、ミキが亡くなって何年もたつし 何よりも、速水の両親は長いすれ違いや ミキの謙虚さゆえに、結婚までは色々あったのだが 二人はしっかり結ばれ、結婚できて、速水が生まれたこと…

誘惑の花

むなしさに取り付かれたように 仕事を辞めた、そんなときに夫が倒れた 脳卒中で夫はあっという間に亡くなってしまった それからは、何をするでもなく日々を過ごしていたが 自分の中で気になっていることは やはり、解消しておこう 夫の死を目の前にして、こ…

ミキの遺産

そんな話をして和んでいると 速水が思い出したように 「そう言えば、この間、命日でも何でもなかったんだけど 息子がアメリカから帰って来たから お墓参りに行ったのよ そしたら、そこに綺麗な百合の花が供えて会って 和尚さんの話では、私たちが行く直前に …

誘惑の花

職場では男女機会均等であっても 力が同じならば、子供を持っている主婦は不利 同じくらいの子供の成績なら お金を持っていなければ不利 そんな悔しい思いをたくさんして子育てを終えた 夫は子供たちの立派な成長に満足しているし それなりの地位にも昇りつ…

ミキの遺産

康太はそのみぃの夫に 娘の婚約者がお世話になっていることもあって みぃはすっかり元気になってありがたかった 「章子ちゃん、婚約したんだって?」 「ああ、まだ、高校生だから、どうかと思ったけれど 雅紀君が早く結婚できるように 仕事の励みにしたいし …

誘惑の花

長い戦いのむなしさ それこそ真剣に頑張って、子供の幸福を願ってきたのに 結局、東京育ちのお嬢様たちのママ友には勝てなかった これから、その友人たちの目標は いかに素晴らしい結婚を刺せるかなのだ もう、そんなことはどうでもいい 子供の結婚を親が決…

ミキの遺産

速水にとっては叔父や叔母にあたる 康太やみぃはいまだに母の命日には 速水のところに立ってきて、母の話をしてくれる お墓参りに一緒に行って、速水の家で食事をする ミキの得意料理 ごく普通の肉じゃが、肉はもちろん豚肉 卵ばかりで中の具はネギと竹輪の…

誘惑の花

京子も必死だった 東京で仕事をするには能力があればよかった でも子育てはそう言うわけにはいかない とにかく、子供の頭の良さとお金が必要だった 夫は小学校から私立出身 それでも、夫を裕福に育てた親は他界しており 財産は夫の兄弟三人で分けたが マンシ…

小百合の幸せ

綾子は自分がどんなに幸せか気が付きもしない この、幸せで、頭の悪い奥様に コテンパンにやっつけられた かろうじて笑いながら別れるのが綾子の最後のプライドだった 小百合はいつものようにお金を払おうとすると だいたい、学生時代からの仲間は その後、…

誘惑の花

俊哉はすっかり田舎のいいお父さんになった 結婚前を知っている田舎の人間は、みな驚いた 『美奈ちゃんがしっかり者だからな』 そう噂していた 俊哉自身も、もともと不良とかになっている気はなかった 何かあれば、人は嚇せと!と教えられ どんな手を使って…

小百合の幸せ

綾子は小百合を本気で憎むかもしれないと思う 今までは、なんとか、どんなに生まれで負けていても 子育ては負けてはいない そう、自負していたのに、章子の近況は 幸せそうで、とても自分の子たちには手に入れられないものだ 仕事をしていることは、コンプレ…

小百合の幸せ

ふたりとも、学費の心配のほうが 勉強の心配の後に来るような生活だ 小百合のところだった、章子は自分たちの母校にいて ごく普通の成績で あまりぱっとした所のない子だと聞いて 安心していた 彼氏ができて、何かと大変だった話は小百合から聞いた 小百合は…

誘惑の花

それに、お互いの体に飽きたのかもしれない 田舎では全く違うエリア、全く違う階層 京子の友人たちが人間とは思っていないほど 毛嫌いしている俊哉なのに こんなに離れがたいのはセックスの相性がいいからかもしれない 京子の夫は誠実で優しいおことで、 俊…

小百合の幸せ

綾子は全くお金も貰えないまま 放り出された そこからは苦難の連続 それでも、歯を食いしばって大学を卒業して 今の仕事を手に入れ 夫と結婚して、何とか子供も大学まで行かせた 特に子供の教育には小百合や学友たちには絶対負けたくないと 苦労して今の大学…

誘惑の花

それから、二人の関係は京子の子供が生まれるまで 続くことになる 俊哉は三人の子どもができ 家庭内は幸せに満ちていた 美奈子は俊哉が田舎では破格なほど 稼いでくれることに満足して ある程度遊ぶのは仕方がないと思っていた 子供の世話で手いっぱいって言…

小百合の幸せ

人の気持ちを考えずに、思いついたことをしゃべるのに 家に帰れば、父や母は愛にあふれた家庭がある小百合 学校では一日中、友達の間にいるときは 本当に思っていることは心深くに隠して 常に正しい、相手が喜ぶことを話す 授業は全力で受けて、勉強も完璧に…

誘惑の花

俊哉は困った顔をした 「だって、奥さんいるでしょう」 美奈子のことはよく知っていたが 全く知らない顔をした 子供もいるのだ、ここに泊まっていいわけがない 俊哉はすっと、京子に近寄ると うつむいていた京子の顔を覗き込むようにしたかと思うと 軽いキス…

小百合の幸せ

小百合のように、回りの空気なんか無視して 話したいことを話す 世の中を敵に回したって、怖い物なんか何もない 自分の思ったことをのびのび言って 相手の反応など考えない 綾子にしてみれば夢のようなことだ だいたい、母は父親の家のお金のこと子供のこと …