誘惑の花

 

むなしさに取り付かれたように

仕事を辞めた、そんなときに夫が倒れた

脳卒中で夫はあっという間に亡くなってしまった

それからは、何をするでもなく日々を過ごしていたが

自分の中で気になっていることは

やはり、解消しておこう

夫の死を目の前にして、このまま死んでしまうのは嫌だった

 

長いこと帰っていなかった田舎に帰った

田舎は驚くほど変わっていなかった

実家の両親は他界していたし、親せきも疎遠にしていたから

泊まるところもなかった

一駅離れた町にならビジネスホテルがあったから

そこに泊まって、タクシーで移動しては

昔を懐かしんだ