誘惑の花
京子は俊哉に恋をしたことはあるけれど
俊哉を愛したことはなかった
だから、彼が何を考え、どんなものを欲しがり
そして、どうやって生きてきたのかなんか
ただ、懐かしむために知りたいだけで
本気で考える気はなかった
その話の中の俊哉は、京子の全く知らない人間だった
田舎では珍しいくらいのスタイルにその容貌は
東京帰りの京子には惹かれてもいい、男だった
東京で俊哉がマンションの前にいた時も
そこにあったのは、もう一度抱かれたい!という
欲望だけだった気がする
だから、自分の人生の中で子供が出来て
ちゃんと生きようと決めた時に
あっさりと自分の人生の中から抹殺したのだ