誘惑の花

二人とも恋は初めてではなかった

それでも、こんなに肌合いが合い

話が通じ

手を握り合っているだけで幸せなのは初めてなのかもしれない

それでも、このことは二人だけの秘密だった

俊哉は美奈子を裏切ることはできないし

京子もそれはわかっていたから

二人の会話の中に美奈子の話は絶対に出てこなかった

 

京子にも彼とこのまま付き合って

自分の人生を彼と重ね合わせることは

冷静に考えれば無理な気がした

今な、話は合う

それは、京子が自分の中で俊哉がわからないことは

一つもしゃべらないからだ

俊哉も自分のバカな過去や、学歴も教養もない自分が

京子とは全く別世界の人間だとわかっていた

美奈子のほうがずっと近い

 

2か月で二人とも会わないほうがいいと思った

美奈子が何となく怪しんでいたし

これから先、全く接点の無さそうな二人が

一緒にいる理由は、ただ、一緒にいたいと言うだけだったから

俊哉は連絡してこなくなった

 

でも、京子はプライドも何もかも、ただ、会いたいという

欲望の前に振り捨てた

何もかもわかっていたけど、俊哉の魅力には抵抗できなかったのだ