魔女
彼女は少し顔を曇らせながら
「それに、あれは、嫌な思い出でね
あの頃、地方から逃げてきた若い奥さんたちは
子供まで面倒見る風俗に入る人が多くて
私にはそんな、人の困った状況を利用して
商売している兄がいたの」
さらりと話したが、いかに昔のこととはいえ
驚きの話だった
「家自体がそんな家でね、私は小さいころからそれを横で見ていたから
自分への自己嫌悪もあって
あの活動を始めていたの
その頃、反発する私に兄や父がよく
『お前はきれいごとしか知らないから
反発するが、東京に出てきた女たちは
真面目に工場で働くとか、その辺のうどん屋で働くとか
そんなことをして地味に暮らすことなんか望んじゃ
いないんだよ!
うちがやってる店じゃ、女たちを監視してたり
暴力で店に置いてるわけじゃない
うちの仕事で納得してるから働いているんだ
田舎から出てきたばっかりで、学歴も金もない
そんな子連れの女が一日1万円もらえるんだ
みんな喜んでるんだよ』
そんな風に言われていたんだけど、私は納得いかなかったのよ
それが、活動を始めてみると
逃げてきた彼女たちが落ち着いたときに
世話した仕事にとどまる率が少なすぎてね