魔女
あの頃、私がもう少し、世の中を知っていれば
彼女をもっと、早く助けることができたのに
あのへんな格好をして、くうちゃんのそばに来て
大人しく何も言わないながらも、楽しかったという彼女
それから、彼女の店は私の家から近かったので
よく飲みに行き
口では言えないほどの苦労を今は楽しそうに話してくれた
そのうち、二人であの、くうちゃんがどうなったかを
気にするようになった
東京の女の人を守る施設で、お手伝い替わりのバイトをしていた私だけど
子供の環境を深く考えることはなかった
くうちゃんも決して幸せではなかったはずだ
父親のDVから逃げてきた母親と祖母
しかし、そんな環境でも男と遊び歩いていた母
くうちゃんは人懐っこい
かわいい子供だったと思う
とくに瑞樹ちゃんが言うには
「あの頃、子供同士で遊ぶっていうのは初めてだったの
わけのわからない、私を食い物にすることしか考えていなかった
大人たちの意地悪さから考えたら
あの子は本当にやさしくて、楽しかった」
そう言って、すごくいい思い出になっているという
私はくうちゃんを探してみることにした
今は瑞樹ちゃんよりも少し下だったから
幸せなおばさんになっているといいのだけれど