魔女

そこから抜け出して、今はカラオケスナックを経営している

あの頃の何も知らない学生だった私ではない

そこにどんな想像を絶する苦労があったことを思うと

 

「よくまぁ!えらいわね~元気で会えて本当によかったわ」

 

瑞樹ちゃんは嬉しそうに

 

「うれしい!

あれから、あの白いご飯をもう一度食べたい

くうちゃんちのように白いご飯を食べる

ちゃんとした生活をしたい

そう思って頑張ってきたんだけど

そうやって、ほめてもらえるのが一番うれしい

誰も、私の人生を褒めてなんかくれないから」

 

火事が起こる前に瑞樹ちゃんはあの、正野に

妙なクラブのオーナーに売られた

その店で大人のおもちゃになった

そこでは美味しいものはたくさん食べられたし

瑞樹ちゃんを痩せさせるわけにはいかない

きれいな洋服もたくさん買ってもらった

でも、瑞樹ちゃんの心には

炊き立てのご飯を炊いてくれる人がそばにいる生活

それが瑞樹ちゃんの目標だった

誰が教えてくれたわけじゃないけれど

間違った生活であることはわかっていた