ミキの遺産

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章子は今まで母の怒り方は
いつだって上っ面だと思っていた
祖母の踏襲、見栄、母本人のため
そんな怒り方だったから
少しも怖くなかった
でも、今は本気だとわかる

本気だけれど、それって間違いじゃん
父の実家の人たちの職業をあげつらい
ショックを受けるなんて
そんなことでしか本気になれない母を今は本気で嫌いになりそうになる

今から先、発達が遅れていても、その仕事に対する能力で
成果を表し、章子と結婚しようとしている雅紀に対しても
絶対に色眼鏡で見るに決まっている
章子は母に対していつも小ばかにしていたのだが
今は章子こそ本気で怒る

「ママって、人間として、本当にダメな人ね
人は一人ひとり尊厳を持って生まれてくるのよ
そこに上下はないってわからないの」

小百合のほうも頭に血が上った

「何を偉そうに、誰のおかげで
ここまで大きくなったと思ってるの
あなたには、まだ、世の中のことなど
何もわからないのよ」

「それはママのほうよ!いい年をして世の中の真実を
何もわかっていない!」