誘惑の花

小さいティスプーンをつけると

すぐに食べはじめようとした

私は自分の前のコーヒーに

 

「いただきます!」

 

そう言って、少し大げさに手を合わせて

頭を下げた

スピカはキョトンとしてそれを見た

私はにっこりした

彼女は少し笑って

そして、スプーンを取って、もぐもぐと食べ始めたでも、同じようにはしなかった

 

なんて不細工な子供だろう

私はそう思って眺めた

りさ子には少しも似ていない

俊哉の面影もない

もちろん、美奈子の愛らしさもない

あんなに美形がそろっているのにりさ子の夫の遺伝子が

よほど強かったのだろう

そんなことを思いながらも、小さな手、そしてモグモグと

一心不乱に食べる様子は3歳児くらいで

とても可愛かった