街の灯り

夫の休みの日
古いこの家でのんびり二人で過ごす
ミキは速水がいた時と同じように
ケーキを焼き、コーヒーを淹れる
沢村はそれを楽しみに居間で本読みながら
焼き上がりを待つ

居間のテレビはずっと、付けっぱなし
速水のコンサートの映像がずっと流れている
武道館ライブの時のやつだ
ここで暮らしていた速水とは別人のようだが
アイドルの子がよく着ているようなドレス
スカート丈は思い切り短いが、その足は美しい
のびのびと歌い、ファンのオタクたちの掛け声に
笑顔で答えて、踊り、歌う
別人のようだが、この画面の中の速水が
本当の速水なのだ

もう、慣れた
ここにいなくても
楽しそうな速水を見て笑いあえる
自分たち二人には速水にこんな幸せは
与えてあげられなかった