街の灯り

沢村が手に取り
うらやましそうに、その写真を眺める

「うちの両親の写真は一枚もないんだ
父さんが絶対に写真なんか取らせなかったのもあるけど
あの頃の愛人の仁義みたいなものを母は守っていて
二人が付き合っている気配を残したのは
僕だけなんだよ
まぁ、それはそれで、僕は自分が誇らしいけどね」

そう言ってミキに手渡す
ショウは沢村の母親が愛人だったと聞いても
何のリアクションもしないで
ニコニコと聞いている

若い父
ミキが知っている父はただただ、仕事をしていて
そのお金は母と祖父に消えていくのに
何も言わず、母に相手にしてもらえさえすれば
それが一番だと思っているような
情けない人だったのに
写真の中ではさわやかに笑って
一番好きな人と結婚できた喜びに満ち溢れている

そういえば、母はなぜ、父と結婚したのだろう
母の恋愛遍歴の中には遊ぶためだけの男だけじゃなかったはずだ
同じ町内のえらいさんの息子や
結構な金持ちもいたはずで、そんな男に求婚されたと
爺さんから聞いたことがある
男と逃げるくせして、離婚しようとは一度も言わなかった母

若い母はミニスカートの足が美しく
ほとんどすっぴんなのにキラキラして父の横にいた