発達障害の母

女が子供を産まない選択がまかりとおる

東京での生活が長すぎて忘れていたが

ここでは子供を産むってことは賢いってことよりも

人として立派だってことよりも

何よりも評価される世界なのだ

母の言葉はそんな村の人全体の言葉に聞こえた

 

「あの、みっちゃんの後家はね

雅ちゃんの旦那と結婚して子供を産むつもりなんだよ

もう、腹の中には入っているからね」

 

そんな下品なことを言葉にするのをたしなめようとして

 

「え?」

 

と、先に驚いた

 

「村のみんなはまだ知らないけど

あたしにゃ、わかっているよ

あの嫁が車に乗るところ、最近見たけど

違うもの

ありゃ、カスミさんが妊娠して車に乗って回ってた時と

一緒だからね」

 

母にはこういう人、特有の妙に観察眼がすごい所がある

母がそういうのならばそうかもしれない

それを知って、雅ちゃんは自殺したのかもしれない

すると、私の気持ちが聞こえたかのように

 

「なぁんの、子供が後家にできたからって

死ぬような雅ちゃんじゃないよ

あの旦那がひどく追い詰めたんだろうさ

もしかしたら、あのお宮まで連れて行ったのだって

旦那かもしれないね

いや、あそこのばあさんかもね」