康太の深淵

仕事にのめりこみ、家には帰らなくなる
家に帰らないと、家事をどこまでやればいいのか
食事は二人分でなければ、いったいどうすればいいのか
そんなことの調整のつかないミツホはだんだん、家の中を
ぐちゃぐちゃにしてしまう
久しぶりに帰って、家を見ればくつろげる場所など何もない
ただただ、戸惑ったように言い訳するミツホがうっとおしいだけだ

着替えを取りに帰ると
散らかったソファの横で
ぼんやりと座っているミツホがいる
帰って来た康太はごみを蹴散らしながら無言で
着替えを探す
自分の服の選択をしながら、部屋の掃除をする
最近では選択と掃除に帰っているようなものだ

「女の人がいるのね」

ミツホがわけのわからないことを言う
康太は相手にするのもバカらしくて
黙って掃除をする
ある程度片付くと

「一週間に二度、家事代行の人に来てもらうよ」

そう、答える
ミツホは自分は康太のいろんな質問に
トンチンカンな答えをするくせに
康太が答えないのを怒る

「女がいるんでしょう?」