康太の深淵

沢村の言葉に康太は頷きながら

「今ならば、そう思うこともできますよ
でも、子供の頃は違っていた
姉さんと普通ってものになるのに
一生懸命だった
大学に入って、ミツホに会ったとき
なんだか、普通以上の幸せな家で育った
理想の相手に思えたんです
そして、彼女にも彼女の親にもすぐに気に入られたし
彼女の母親はうちには両親がいないってことも
詳しく調べることもなく
ミツホが姑にいじめられたりしなくて都合がいいと
思ったみたいですからね
あの時、詳しく調べてくれていれば結婚なんかしなかったでしょうけどね」

「でも、うまく別れられてよかったじゃない
私も普通の糧にはすごくあこがれたけれど
みぃや速水を否定することはできないから
自分が幸せなら、普通じゃなくてもいいって気が付いたのよ」