康太の深淵
ミキは康太に昔ながらのミキのカレーを出しながら
サラダとヨーグルトを添えながら
「あの頃って、カレーには肉が入ってなかったし
サラダやヨーグルトを添える経済的余裕はなかったわね」
夫の沢村は
「僕はそれでもかまわないよ
カレーだけが好きだから」
康太は笑いながら
「あの頃は普通っていうのに、すごくあこがれていたんです
金銭的に普通の生活ができないこともそうだけど
親が、特に母親が料理をしてくれるとか
子供のことを真剣に考えてくれるとか
そんな普通の家にあこがれていたから
今、あの頃のカレーに肉が入っていて、サラダとかあるだけで
自分がそこまで登って来たなぁって思いますよ」
ミキは少し考えながら
「そうね、普通のテレビに出てくるような
そんな家庭にあこがれたよね
絶対、自分はそんな家庭を作るんだって
ちょっと、気負いすぎていたんだわ」
沢村は
「普通なんて本当はないのに
テレビとか義務教育の中でみんなを一律にしようと
世の中全体が流れていたからね」