.....の無い

心の奥底ではわかっていた
姉が沢村教授を知っていること
沢村教授の小説の主人公は
ミキとしか考えられないほど
よく似ていた
沢村教授が言うところの康太の横顔

ミキが少し考え込みながら
憂いを持って少しうつむく時の
あの、美しさは康太が一番よく知っている

「お姉様に私も会いたい」

みつほはそう言うが
康太はみつほをただの大学の後輩
そう、思うには心を侵食されすぎている

次の日曜日に康太はミキを訪ねた

「久しぶりね」

姉は嬉しそうに手料理を作り
康太のシャツやセーターを買ったから
来てくれてちょうどよかった
そう言って服を渡してくれた

姉の好みはいつだってオシャレで
ああ、そういえば自分の服の趣味は
沢村教授と同じだ