理想の父

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実家の親と相談して小百合が何か奔走していたのは
知っていたが、見て見ぬふりをしておいた
数百万は動いたんじゃなかろうか
そして手に入れたのびのびした環境の結果がこれか!
康太は子供のころ憧れた、裕福で幸福な家族ってやつが
結局はあんなふうに貧乏にがさつに育ったって
雅紀とは巡り合ったんじゃないか?

今、こんな気持ちを誰かに話すわけにはいかないが
なんだか釈然としないまま
姉の墓参りに来た
すると、ちょうど速水も来た

「あら、叔父さん!
ありがとう。母もきっと喜ぶわ」

「その手に持っている百合
ちゃんと覚えてくれたんだね
こちらこそ、ありがとうだよ」

それは、父の家の古い庭に
毎年美しく咲く百合の花で
父の母がすごく愛していたと聞いてからは
母がいつも丹精していた百合だ
康太はそんな花が咲く庭のある古い家で
一番愛した人と生活を送ることが出来る
そんな姉の幸福を心から喜んだ