逃亡

だいたい、うちの村は割と穏やかで頭の悪い人間が多い

昭和の親がいる家では、子供のしつけに

親が手をあげるのは当たり前だと言う人もいるが

そんな村ではなく、子供も親の言うことは聞くと

しつけられていた

貧乏な村だったから、子供は中学を出ても

だいたい、高校には行けない

頭が悪いから公立には行けない

そうなると、親の言うことを聞いて

村で親の手伝いをしながら大人になったり

親のつてで都会の工場に中卒で行く

そんな環境だから、親の言うことを聞いてなければ

中学卒業してからが路頭に迷うことを

誰もが言葉に出さずともわかっていた

田舎の子だから反発して村を勝手に出ていくことなんか

心の隅で思いもしない

山深い田舎の村なんか、いくらテレビがあって

インターネットがあってもそんなものだ

スマホは高校に行けるごく少数の子供の物だった