そして恋人へ

「何にやにやして考えているの?
弁護士さん!」

優未が少し大きな声でそう呼ぶから
近くに座っている人たちが、康太を物珍しそうに見る

「ハハハ、弁護士さんはやめよう」

「じゃ、先生?」

「いやいや、僕は戸田っていうんだよ」

「戸田さん?」

こんな会話すら楽しくて仕方がない
康太は娘がいたらこんな感じかなぁと嬉しくなる

「うん。
それで、何か相談でもあるの?
何度か事務所を訪ねてくれたみたいだけど」

「ううん。戸田さんに会いたかったの」

康太はやはり、よくなかったのかと反省する
父親は優未とまともには生活できないのじゃないか
離婚のきっかけになった女と結婚したのだろうか