.....の無い

ミキには康太の気持ちは手に取るようにわかった
それに、自分は康太にはもう必要のない存在なのも
よく、わかっていた
これからは、たぶん、足を引っ張る存在でしかない

その日から康太は帰ってこなかった
ミキはこの家を売り
そのお金と財産はすべて康太の通帳に振り込んだ
ミキは康太に住所も教えずに消えた

ミキはその足で新しい小さなアパートを借り
何とか生活できるようなバイトを探し
ただ、生きていく
そんな生活を始めた

弁当屋で朝。四時からの弁当作り
帰ってくればご飯を食べて寝る
自分の生活はこれ以上でもこれ以下でもない
つまらない毎日の中で心に消しても消しても浮かんでくるのは
沢村とのことばかり

何年も会っていないのに
昨日のことのように
彼の笑顔が浮かび、彼の話し声が聞こえ、彼の話も思い出した