........の無い

そんな日々が続いて、
仕事からの帰り道
康太が部屋の前で待っていた

「姉さん」

久しぶりに会うその顔には
前に家を出て行った時のミキに対する
嫌悪感はなかった

ミキのほうが戸惑った

「久しぶりね、元気にしてた?
お茶でも飲んでいく?」

そう、部屋に誘う
お茶を出すと康太のほうから一冊の小説を渡された

「これ......僕のお世話になっているゼミの先生が
今度、出すことになった小説
来週には店頭に並ぶそうなんだ」

ミキは沢村の名前を懐かしそうに見つめた

「そう」

その表紙は二人で歩いた大学のあの銀杏並木