.....の無い

ミキがここに帰ってくるまで
何をしていたのか全く考えたこともなかった
聞いたこともなかった
自分の夢に夢中でミキはそれを全面的に応援してくれる
完璧な姉だと思っていた
今、冷静に考えたら
ミキだってこの家の女だ
普通の人生を送っているはずはない

康太だってバカではないから
自分が生まれる前のこの家が普通の家ではなかったのはよく知っている
爺さんは婆さんに逃げられてキャバレーの呼び込みや雑用をやっていた
父親はまじめだがあの、母親にただただ、惚れていて
馬鹿じゃないかと思うほど母親を許す

ミキが中卒で世の中に出たときに
どれだけ大変だったか、想像するべきだった

しかし、理屈では越えられない
康太がこんな家なのに
小学校のころからゲームにも友人たちとの遊びにも
まったく興味を示すことなく勉強にまい進したのは
こんな家だったからだ
母親が男好きでしょうもない女だったからだ

「俺、この家を出る」