.....の無い

康太は本を置いてミキのところを出てから
少し、気持ちが変わってきた自分に気が付いた

もちろん、翔子がミキだと気が付いたわけではない
ただ、沢村教授の美しい文体で書かれた
あの、恋物語は・・・・
ヒロインの翔子さんは世に言う風俗嬢だった
遊女、そう書かれていたが
その仕事は確かに康太が知っている体を売る女で
世の中で一番おぞましいと思っている女だった

何かの本に書いてあった
好き好んで風俗嬢になる女なんていない
そんなことはない
母はそうだった、たぶん、祖母もそうなんだろう
そして妹だって、結局あんなことになっている
尊敬し同志だと信じてきた姉もそうだった

でも、沢村の小説はそんな女を浄化していた
康太は小汚いあさましい女の性のようなものを
あんなふうに美しく歌い上げることができる沢村に
自分のこの気持ちの変化を聞いてほしくなった