.......の無い

「姉に初めて会った時には
僕は小学生で、それまで、あこがれていた普通の家庭
そんなものをさっさと作ってくれた姉を疑うことさえなかったんです
でも、今、冷静に考えれば
祖父や母、父が僕のころよりもひどかった時に
中学卒業してすぐに、僕の家を出たんだから
当たり前といえば、当たり前なのに・・・」

沢村は話を聞きながら
その姉の映像が祥子になっている自分に苦笑いしながら

「そんなに悩むことはないよ
姉を許すとか許さないとか
お姉さんには君を助けてくれたような姉はいなかったってことさ
今は一緒に暮らしていないんだろう?
姉さんは君の気持を考えて
君のそばにはもういないんだろう?」

「はい、僕が勝手に家を出たものですから」

「世の中の常識にとらわれちゃだめだよ
常識は人間の一番多いクラスの人たちをまとめるためのもので
クラスが違えばそんなものは一つも重要じゃないし
悩む必要もないことさ
僕の母はずっと、世間でいうところのお妾さんだったよ
それでも、母は美しかったし
それでも母は僕を真剣に育ててくれたし
僕は僕に対してだけの母の思いだけ見つめて
生きてきたんだ」