.....の無い

沢村はミキが消えた理由はそういうことなんじゃないか
長い年月、考えてみると
すべてはそこにある気がした
ミキが消えてすぐのころは
ひたすら自分のほうに、ミキには口に出せない
なにか嫌われるところがあったのだろう
そう、考えていたのだが

少しずつ、自分が冷静になってくると
ミキとしゃべったすべてを一つ一つ思い出して
一つ一つ丁寧に咀嚼しなおしてみた
そして、ひたすら客観視して自分の恋を
遠くから見てみた

彼女は決してバカではなかった
深い思考の持ち主で
中卒という学歴からは信じられないほど
本は読んでいた

その彼女が自分を避けるのはたぶん
そこにある環境の、そして文化の差だろう

康太が買ってきてくれたコーヒーを受け取ると
そんな考えをまとめながら
彼を見つめる
まるで横に座っているのが祥子のように感じてしまう