.......の無い

康太はそんな沢村に甘えるように
自分の話を始めた
沢村には相手に全く緊張感を持たせないような
和やかな空気があったし
康太は沢村の理由のわからない好意をひしひしと感じていた

「僕、長いこと自分の生まれをのろっていました」

「え?そんな風にはとても見えないよ
ちょっと、シャイな感じだけど、いい家庭に育ったんだろうなって
思わせる優しさが見えるけど」

「え?本当ですか?でも、全然違うんですよ
僕が生まれたのはK地域です
不衛生で日本のスラムと言われていたこともある
あの、地域です
祖父は僕が気が付いたときは
キャバレーの客引きをしていました
祖母は男と逃げたそうで、いったいどんな人なのか
写真すら残っていません」