2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

暇な奴ら

数人の若い母親たちに囲まれて 速水は退屈でうんざりしていた 会員制のジムで、たまに汗を流すのだ 星人はすっかり音楽、それもジャズにはまって ニューオーリンズに行きたいといいだし じゃ、一緒にという速水を置き去りにして さっさと自分で手続きをする…

魔女

「やめたときに捕まえた男があれからすぐに 雑誌に載っていたから、よく覚えてるよ みんなでくうちゃんって子はやり手の男を かぎ分ける能力があるんじゃないかってね」 「雑誌に載ったんですか?」 「ほら、IT企業ってやつ! 今はどうしてるかわかんないけ…

姉のこと

章子が姉に似ていることは 康太は誰にも言わなかったのだが 速水がこっそり、康太に行った 「おじさん、章子ちゃんってママに似てるわね しっかり者で、小さいのに自分より弱い者には 全力でお手伝いしてるとことか ホント、ママそっくり ママが生きていたら…

魔女

「なんて言ったって、男の前だと 全く違う人間でね ものすごく素朴で弱そうにしてるんだよ だから、本名だなんて客に言うと こんなところに本名で出るほど、危ういんだったら 俺が何とかしなきゃ・・・・なんて思わせたのかもしれないしね どっかの会社の社…

姉のこと

小百合の実家の両親は 康太の血だと大喜びする でも、康太にしたら自分ではないと言いたい 自分は姉のおかげで、今があるのだ そんなことを思いながら章子を見ると もしかしたら、姉に一番似ているかもしれないと思う まず、顔が小百合には少しも似ていない …

魔女

「ああ、たまにいるよ この世界ってどっからか、逃げてきた子 田舎の家出少女 犯罪を犯して、夜の世界に隠れに来た子 そういう時が、この、マリーさんの出番さ! えっと~くうちゃん?ああ、ついこの間だよ 30年くらい前だろう?」 マリーさんにかかっちゃ30…

姉のこと

小百合は康太が、いちいち驚いているのには 気が付いていた 康太の生まれ育った住所 東京はその住みわけがすごい その場所を聞いただけで、恵まれていない子供時代だったろうとは 容易に想像できた でも、そのことは触れてほしくなさそうなので どんなに気軽…

魔女

驚いたことに、『可愛い子猫』の店舗は残っていた この辺りでは、もう、名物店となっていたが もちろん、そこには昔を知る人間はいないだろう そう覚悟していたら ものすごいおばあちゃんを黒服が呼んでくれた 「そんな昔のこと、みんな知っちゃいないよ! …

姉のこと

あの頃、うらやましかった、あのセレブの子たちと 自分の娘が同じ道をたどるのかと思うと 不思議な気持ちがするし 姉に 『姉さん、姉さんのおかげで、ここまで登って来たよ』 そう心の中で呟いてみる みぃの子供のショウだって、小学校から世界のセレブが集…

魔女

「くうちゃんとは、一緒に逃げようって言われて ホント、ドキドキしたな~ そんで、新大久保のアパートを借りて 三か月くらい一緒に住んでたんだけど ある日突然、帰って来なくなってさ それで、ここに帰って来たんだよ~ 鬼嫁だけど、まぁ、なんとか許して…

姉のこと

康太は全く違い世界を見せられた 努力とか頑張るなんてことは 本当に庶民の間にだけの、悪なのかもしれない 章子のように、生まれた時から小学校が決められていれば まだ数か月のころから 完璧な幼児教育、コネなんかいくらでもある 聞けば祖母の代から、女…

魔女

歯がまったくないお爺さんが出てきた 照れ笑いしながら 「何?くうちゃんの行方が知りたいって? 俺も知りたいよ~ あんなに楽しかったのは、俺の人生の中で 最初で最後!」 さっきのおばさん社長とはえらい違いだ 「ここに来たばかりのくうちゃんは 田舎娘…

姉のこと

娘の名前は章子 今時、そんな名前で子供が小学校にでも入ったときに いじめられないだろうか 康太が心配げに小百合に言うと 小百合はにっこり笑って、 「これは、お爺様の希望なの もちろん、命令とか絶対とかじゃないけれど そうしたほうが、お爺様はお喜び…

魔女

板橋のその住所には、もちろん、いなかった くうちゃんは田舎の知り合いのつてで 東京の板橋にある、小さなお菓子の卸売りの店に やってきたらしかった ありがたいことに、そのお菓子の卸売りの店は 小さいながらも細々と家族でやっていた くうチャンのこと…

姉のこと

康太は驚いている自分を隠して 「あ、もちろん、妻のために僕が それに、ぜひ、よろしかったら部屋は用意しますので」 小百合は嬉しそうに 「嬉しいわ!私一人では心もとなかったのよ」 康太は、これがあるべき姿なのじゃないか? 男はやはり子育てや家事に…

魔女

驚くような子? 二人でお爺さんの顔を見ると 「まぁ、人に言えるようなことじゃねえ! 今もたぶんロクなことはしちょらんやろう」 これ以上は話そうとしないお爺さんに くうちゃんからの最後の年賀状を見せてもらうと 「そんなもん、持って行ってもいいから…

姉のこと

小百合は素早く、さっさと家事をするタイプではないし 実際に頭がいいかというと、そうでもなく おっとりしているところがあるから 子育てが少し心配だったのだが 小百合の母親が 「うちにね、長いこといてくれたシッターさんが 娘に子供が出来たって話した…

魔女

「だからってこともないじゃろうが あの娘は、わしらの手には負えん子じゃった あの時、東京に妹や妹の孫たちを迎えに行ったが あれ、以来、会ってないんじゃ 子供を捨てて、男と逃げたなんて 本当に恥ずかしかったもんじゃ」 お爺さんは吐き出すように言っ…

姉のこと

心で思うことを 相手を想うことなく、 平気で口に出す 家族だから、親族だから まるで本音で言い合うことが、家族の印でもあるかのように 康太が知っている家庭はそんな家だった 父は無口で何も言わない人だったが 母は自分が一番賢く、正しくもないくせに …

魔女

「妹はとっくに死んだが、まぁ、気の小さい女でな~ あの娘の言うがままだったな~ 娘の父親は誰かわからんままじゃった」 そのお爺さんの話は、どこかここかに飛びまくるのだが あの時のおばあちゃんが、このお爺さんの妹で あの時のくうちゃんのママがどう…

姉のこと

親族が集まった中に、たった一人も変な人間がいない 小百合の家は、家は大事にするし、病院も代々やっていかねばならない そう思っているのだが 今、この時点では一人一人の幸せが一番だと考え 兄の嫁に子供ができないのを責めることもなく 康太のバツイチな…

魔女

そこに行ってみると かなり年の行った老人が一人で住んでいた 二人が事情を話すと 「ああ、わしが迎えに行った、行った 東京まで行ったな~ 農協の旅行以外で東京に行ったのはあれっきりだったな」 90以上に見えるがしっかりしている 「姉は娘を産んだが、そ…

姉のこと

康太に女の子が出来た その、女の子の誕生に みぃはもちろん、速水の家族 そして、何より小百合の実家の喜びようは 尋常ではなかった 兄の家にまだ子供がいないこともあるのだろうが 両親は康太を拝むように 「娘も頑張ったが、君が娘を愛してくれたから こ…

魔女

二人で旅行することは意外に楽しかった もちろん、瑞樹ちゃんは客商売が長く 人あしらいがうまく、愛想もいいスナックのママなのだから 当然と言えば当然なのだが あの頃の瑞樹ちゃんを思うと 人間というのは変わるものだと感心してしまう それは、瑞樹ちゃ…

姉のこと

小百合は専業主婦以外は考えてもいなかったようで 康太は家に帰ると 完璧な家庭が待っていた 食事は夜はシチューや肉じゃがなど 手間暇かかったものばかり とにかく料理はうまく 家に帰るのが楽しみで仕方がない 専業主婦の小百合は全勢力を康太に使ってくれ…

魔女

そのことを瑞樹ちゃんに告げに行くと 「ねえ、その親戚の住所はわかっているんでしょう? 一緒に小旅行だと思って、行ってみない? だって、私、九州のほうに旅行ってしたことないから その、湯布院ってところ行ってみたいわ 温泉で有名だって聞いたことある…

姉のこと

一流ホテルで結婚式を挙げた 康太にとって、結婚式までは 『ちゃんとする!』ということがどういうことかわからず 速水に調べてもらって、その道のプロ 皇室関係の儀式にも詳しい人間を紹介してもらい 正しい、相手の家への訪問から 結納の儀式のやり方 そし…

魔女

「だって、それは当たり前でしょう ちゃんと、面倒見てくれたんだもの でも、それがあなたの役に立っていて良かったわ あの頃から、経営は悲惨になったし そんな母親が増えて、何のためにやってるんだろうって 辞めようと思ったことも多かったのよ でも、父…

姉のこと

会うのを重ねるうちに 小百合にしようと、絶対的に決めたのは そういう環境もあるのだが それよりも、自分が傷つくことは絶対にしない その、しっかりしたスタンスだ 仕事でデートの待ち時間に遅れても その理由は聞かない とにかく、康太が聞かれて困りそう…

魔女

「くうちゃんの母親はあのまま、帰ってこなかったのよ あのおばあちゃんは病気で田舎の病院に入院してたらしいの でも、入院費が払えないから この施設を知った、くうちゃんの母親が ここに行けば何とかなるからって 子供とおばあちゃんを引き連れてやってき…