魔女
「だからってこともないじゃろうが
あの娘は、わしらの手には負えん子じゃった
あの時、東京に妹や妹の孫たちを迎えに行ったが
あれ、以来、会ってないんじゃ
子供を捨てて、男と逃げたなんて
本当に恥ずかしかったもんじゃ」
お爺さんは吐き出すように言った
「それで、くうちゃんはどうなったの?」
「ああ・・・・」
お爺さんはあまり話したくなさそうだったが
瑞樹ちゃんが催促するように、手を優しくなでると
「いや、あの子にも手を焼いてな~
高校を中退して、すぐに、湯布院を出て行って以来
どうしているのかも、わからんままじゃ」
二人に目を合わせないよう、そんな風に言う
「私たち、小さな子供のころに
くうちゃんと東京でほんの何日かだったけど
一緒に過ごしたの
その時の楽しかったことが忘れられなくて
すごく、いい子だったと思うんだけど」
お爺さんは驚いたように
「あん子んことを褒めてくれる人は初めてじゃ
小学校に入った、いや、入る前から
驚くような子じゃった」