魔女

板橋のその住所には、もちろん、いなかった

くうちゃんは田舎の知り合いのつてで

東京の板橋にある、小さなお菓子の卸売りの店に

やってきたらしかった

ありがたいことに、そのお菓子の卸売りの店は

小さいながらも細々と家族でやっていた

くうチャンのことを聞くと

そこの社長であるおばさんは、途端に嫌な顔をした

 

「ああ、あの子ね~

あんな子に何か用事でもあるの?

もしかして、あの子にどっかの爺さんからの

遺産があるとかじゃないでしょうね?!

それならば、ぜひ、うちに慰謝料払ってもらいたいものだわ」

 

私がそういうことじゃないと言うと

 

「あ、もしかして、あんたたちも

旦那を寝取られて、貯金持ち逃げされたとか?」

 

私たちはビックリしたあのお爺さんが言っていたことは、盗難もあったのかと

何となく納得した

 

「それじゃ、今どうしているかとか

その当時どこに行ったかとかわからないんですね」

 

「ああ、あの頃のことで良かったらわかるよ!

うちの旦那が、よく知ってるからね」

 

そう言って、夫を呼びに行った

私たちはただただ、驚くばかりだった