2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

タケオという男

それで、いったい木佐は何を言いたいのだろう? 「あいつの今の居所聞いちゃダメかな?」 この世界では暗黙の了解のような物があって 昼の世界に帰ったものはどこかであっても、知らないふりをする もちろん、そんなことは知らない人間も大勢いるが 木佐は多…

発達障害の母

その時代のことだ、そんなに理不尽な話でもないだろう 新築の家や土地、そして牛一頭 他の村の人間が聞いたらうらやましがるに決まっている結婚だった そこに入って来たのがその頃、青年団の活動に熱心だった母だ 母には癲癇持ちの妹がいた 母が高校を卒業し…

タケオという男

「タケオって外で客と昼間は絶対会わないって 決めてたし、あいつ、夜の関係者で特に女とは 絶対にしゃべらないって決めてたくらいだから ああやって、話ができるのはハーミーしかいないだろうって タケオから推理したんだ ハーミーのことは尊敬してたからね…

発達障害の母

結婚してどのくらいで恋が冷めて 母の本当の姿に気が付いたかはわからないが それは比較的早い時期だったと思う 父の母、私の祖母にあたる人は割と早くに亡くなって その後に後妻である香苗さんが来たのだ 香苗さんには二人の子供もついてきた 姉のほうはち…

タケオという男

木佐はもう一度速水を店の中に誘った 速水は今の自分をハーミーとわかる人間に驚きだ たとえ、一度寝たことがあるとしても・・・・ 木佐は速水のその疑問に答えるように 席についてコーヒーを頼むと 「いや、今、目の前にいてもわからない でも、さっきの、…

発達障害の母

父は田舎の公務員で出世もしなかったがバカではなかった 父っ子である私は小さなころから 父からいろいろな話を聞いていた それは今思い出しても理屈の通った、感情的など 薬にしたくてもない、楽しく興味深い話だった 母は父を派手好きで男らしい人 そう子…

タケオという男

お茶を飲み終わるとダッフルコートに手を通しながら 「まかせといてね!このままだと東大は無理でも 慶応ならば行けそうだよ ちゃんと大学を出たら、働いて返すからね」 そう言って帰っていく 感じよくて、二人の間柄が 男を買う若い女と、体を売る男だなん…

発達障害の母

私はごく若いころから 多分、中学のころから恋愛結婚に憎悪を抱いていた 父や母の世代はほとんどがお見合い結婚 親族の中で物のわかった伯母や伯父などが その子にあった相手を探してくる その親族までも調べて、一番釣り合った相手を見つけてくれるのだ ど…

タケオという男

ミルクティーを飲みながら 「ねぇ、ハーミー、ちょっと聞いて 朝、一番にお味噌汁をちゃんと出汁を取って作るとさ 最高の油揚げとか買いたくなって 予備校終わりに、デパ地下とか回ってみるんだ 卵焼きもすごくうまくなったよ 今度食べさせてあげるよ そして…

タケオという男

ミルクティーを飲みながら 「ねぇ、ハーミー、ちょっと聞いて 朝、一番にお味噌汁をちゃんと出汁を取って作るとさ 最高の油揚げとか買いたくなって 予備校終わりに、デパ地下とか回ってみるんだ 卵焼きもすごくうまくなったよ 今度食べさせてあげるよ そして…

タケオという男

ミルクティーを飲みながら 「ねぇ、ハーミー、ちょっと聞いて 朝、一番にお味噌汁をちゃんと出汁を取って作るとさ 最高の油揚げとか買いたくなって 予備校終わりに、デパ地下とか回ってみるんだ 卵焼きもすごくうまくなったよ 今度食べさせてあげるよ そして…

発達障害の母

母方の母の兄妹は知性のかけらもない人間たちなのだが 計算は得意で、特にお金が絡めば間違いはしない そんな人間たちばっかりで 私は子供のころ、母の実家に親族が集まるときは とにかく何もしゃべらない大人しい子供で通っていた 父のほうの親族からは、ど…

タケオという男

もちろん都内の中流家庭がおおく住まう一軒家で育ち 父は一流企業のサラリーマン、母は女子大出 保育園ではない、幼稚園に通って専業主婦の母が迎えに来る 小学校受験をするには所得が少し足りないが 中学受験は一応考えている家 しかし、小学校時代は受験勉…

発達障害の母

母の兄妹は多いから必然的に従妹も多くなる その多くの従妹たちの中でも 母の実家、本家の長男の子供たちが好きではないのだ まるで母と同じような思考回路 もちろん、発達障害なんかではない わたしよりも数年上の者や年下の従妹もいるのだが だいたい同じ…

タケオという男

タケオは無邪気に自分がうまくいっていることを 報告したいのだ 会いたいとタケオが言い、速水がそれなりの店を用意する 速水は前の夜の仕事だったタケオならば 最高級の肉でもワインでも週に一度くらいは 食べたり飲んだりできる環境だったが 今はそうはい…

発達障害の母

それは母の実家の自慢である 母も母ではあるが、母の実家こそ私は大嫌いなのだ もちろん、父が母を選んで結婚したのが すべての私の苦しみの元なのだが 私は愛情をもって育てられたのが父だったから どうしても父を擁護する気持ちになるのだ 父が母に恋をし…

タケオという男

速水に至っては、心の奥底では これだけお金をかけてあげても、結局できずに 元のタケオに戻って男娼を続けていけばいいと思う だいたい、男娼たちの中にいるからこそ 少しちゃんとしている感が醸し出されていて タケオの魅力があるのだと思っていた 今から…

発達障害の母

普通ならば家族の間の自慢話は嬉しいものだ 私は誰にも話せない子供の自慢話は夫にするのだが 二人でどこまでも自慢のしあいになってしまう 子供が親に学校でこうだったああだったなんていうのも 親としては嬉しいものだ うちの子供たちは親にそう言う話はあ…

タケオと言う男

速水は素直に父に相談したのだ この間大学の門のところにいた男の子が 実はもう一度自分の居場所に戻りたいって思っていること もちろん、自分が彼を好きだとは言っていないが・・・ すると、父親は事細かに速水がさっき提案したことを教えてくれた そして、…

発達障害の母

それでも、母の話はいつもその頃の自慢で始まる 私は洋裁も好きだし、上手だったのよ 一年間、私は母のすべてを受け入れて、全部を飲み込んでしまおう そう、決心してこの家に数十年ぶりに帰って来て そこに向けて努力してきたのだが 発達障害独特の執拗なま…

速水の悩み

そう、偉そうに話しながら速水は心の中で笑っていた 自分が一番好きな人、 家で大人しくお嬢様のような生活をしていても 母と楽しく買い物をしたり 父の大学にお弁当を届けたりと 昭和のうぶで大人しいお嬢様を演じていても タケオのことはいつも心から去ら…

発達障害の母

自分で作るようになってわかったのだが 母の洋裁は随分危ういものだった いつも畳に針が落ちていて、小さな私がいるのに危ない!と 父がよく怒っていたが、普通に服を作っていれば 畳に針が落ちることなどまず、ない 袖をつけ間違うことが多くて、イライラし…

速水の悩み

「え?全部出してくれるって言うの?」 「そう!」 いや、ない話じゃない こんな仕事をしていると、マンションを買ってくれるとか 高い車を買ってくれるとか 服だって、女のツケで好きに買っていいとか言われる 店も出してあげるって話もある でも、それはも…

発達障害の母

私が生まれてから一番幼い時の父の思い出は 冬、こたつに腰かけて裸足のあしを父の前でぶらぶらと 楽しい気持ちで待っている 仕事に行く前で忙しそうな父なのに 私に靴下を履かせてくれている それが父の思い出だった 母は私が小さいころは女学校の洋裁科を…

速水の悩み

「私のパパ、大学教授って言っても 文学を専門にしているから、恋愛に関して 机上で語るエキスパートなのよ 好きな人って同じステージの人から選びがちなんだって」 「そういうことか! 確かにお客に恋する奴がほとんどだけど あ、さっきの木佐さんも一番大…

発達障害の母

それはたぶん、毎夜毎夜寝る前に昔話を聞かせてくれた父の 話の中だったのだろう 昔話はたいがい、勧善懲悪で終わるようになっている 自分が子供を持つまで気が付かなかったが 私を寝かせつけてくれたのは弟が生まれるまで父だった それを当然のこととして私…

速水の悩み

木佐のことを思い浮かべる 仲間の中では綺麗好きで少し神経質なくらいだ 木佐のところに遊びに行っても トイレすら、立ってするなと煩い 整然とした部屋と同じように そのたたずまいも整然としている 本を読むのが好きで、特に歴史小説はいつも手に持ってい…

発達障害の母

私が母を思い出すときに、一番先に思い出すのは 私が5歳、弟はまだ、生まれて六か月くらいだった それまでの私の中の母を思い出そうとしても全く思い出せない いつもそこから始まるのだ 濃い緑のねんねこ袢纏、その柄までも精巧に思い出す 弟はその中で母に…

速水の悩み

「女の子、ううん、それだけに限らずだけど タケオは親が普通以上の企業に勤めるサラリーマンで 母親は育ちのいい家で短大程度の大学に入れてもらっていて 都内の普通より少しレベルのいい建築の家に住んで 子供は二人くらいで、どちらも小学校からは私立は…

発達障害の母

発達障害であれ、心は汚い人間は汚い 特に母は自分が人よりもどこか劣っているのには気が付いているから 見栄を張ってでも、頭のいいふりはしたいのだ そして、母の周りの環境は お金で損をする人間は頭が悪い! それが常識の人間たちの集まりだ だから、母…