発達障害の母
私が母を思い出すときに、一番先に思い出すのは
私が5歳、弟はまだ、生まれて六か月くらいだった
それまでの私の中の母を思い出そうとしても全く思い出せない
いつもそこから始まるのだ
濃い緑のねんねこ袢纏、その柄までも精巧に思い出す
弟はその中で母におわれて、よく眠っていた
母は私の手を引いている
そこは店の中だった
母はもう一つの手で、スリッパを手に取ると
素早くねんねこ袢纏の中にスリッパを隠した
その場面から私の記憶は、すぐに店の事務所に飛ぶ
店の人が父に電話をして、父がすっ飛んでくる
それが私が母を思い出すときに一番に思いつく光景だ
その頃、私たちが住んでいた村はものすごい山奥で
幼稚園に通う習慣があったのは村ではごく限られた二件だけで
私は保育園も幼稚園も知らないまま小学校に上がった
私に善悪の観念を教えてくれたのは誰だったのだろう?