2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

速水の子育て

「じゃ、僕は公立に通いながら どうすればいいの?」 速水は昔ミキに言われたことを星人に語った 「どの教科も一生懸命やって 好きなことを見つけて頂戴 康太おじさんは、貧乏で習い事もできなかったけど 勉強は誰に言われることもなく、自分でたくさんやり…

おばさんであること

明美はその夜、家に帰ったのは三時すぎっだった 坂の上とあのままホテルに入ってしまったのだ 自分でも思ってもいなかった行動 でも、心から幸せに思えた でも家に帰る玄関の前まで 罪悪感にさいなまれ、何度、言い訳を考えたことだろう しかし、帰って来て…

おばさんであること

「全然!私今まで何してきたんだか もう、最悪なの」 坂の上は驚いてはいなかった こんな時間に 主婦ならば一番忙しい時間だ その時間に自分のピアノを聞きに来るなんて 幸せなはずがない 「僕もそうだよ あの頃も幸せじゃなかったけど 今もそうだし これか…

速水の子育て

「うん。楽しかった! おじいちゃん、ものすごく お話がうまかったね 僕もあんな風になりたいな」 そう言って星人は自分の部屋に行ってしまった 最初にこの部屋に入ってきた時からは 考えられないくらい大人になった 「驚いたね。 目の前でぐんと成長した気…

速水の子育て

「うん。なんとなくわかる 僕が小さい時にみんなが 色々教えてくれたでしょう? あの時、勉強ってすごく楽しかった あ、勉強ってものじゃなかったね それぞれが僕をお守りしてくれる時に 色々楽しい話をしてくれたって感じ あんな風にやれる勉強なら 塾とか…

おばさんであること

明美は自分がものすごく緊張していることに気がついた高校の頃の淡い想いそれが明美の色恋の最後だった学生時代の合コン母の勧める見合いそして、父が見つけてくれた夫どれもそれなりに楽しかったが恋ではなかったしいつだって平常心だったでも、今は顔に血…

速水の子育て

2人は星人のその言い方にハッとした あ、私の父に似てる いつだって理路整然としているくせに あの母親を追いかけて止まなかった 感情の人 喋り方がそっくりだ 「そうだな ママの気持ちを聞いたことはないけれど パパとしては星人は中学受験はしなくても い…

おばさんであること

その声はあの頃とは少しも変わらない坂の上のものだった振り返ると彼が立っていた「あ、お久しぶりです」明美は真っ赤になってしまった彼は歳をとった髪には白髪が混じり皺もそれなりにあるでも、あの頃のように心臓はときめいたしかし、その瞬間自分はあの…

速水の子育て

自分が祖母に似ていると言われるのは心外だったが 何となくそうじゃないかとは思っていた 性格だけじゃなく、顔もよく似てると言われるのだ だからと言って、親に愛されていないとは思わない 二人が自分のことを愛してはいるが 自分のすべてを肯定してくれて…

おばさんであること

明美は彼とどうかなりたいなんて思ってもいない自分の人生のなかで唯一心ときめいたあの時期を懐かしむようなそんな気持ちだホテルのラウンジに聞きに行っても彼が明美を覚えているはずもなく彼も痩身の美青年だった頃はもう遥か昔今はロマンスグレーの伯父…

速水の子育て

星人はそんな父が何となく 情けないと思ったし お母さんらしくない速水を素敵だとは思わなかった 星人が素敵だと思うのは速水を大人の女として見た時だ でも、そう思うことは、何となく背徳感がある なんだか、星人が日本に帰って来て 学習したことに 日本の…

おばさんであること

女子高生だった明美にとって十分すぎる ロマンスの相手だった その陰のある人生をいかにもと思わせる 暗そうで色白な華奢な風貌 真っ白なシャツから延びる 細い腕 そして、その指から聞こえる調律の音 もちろん、何かしゃべったりしたわけではない ただ、焦…

速水の子育て

タケオが笑いだした 「いいじゃないか 君のママは大金持ちなんだ おかげで、パパは好きな仕事ができる 今の仕事は上司に悩んだり、理不尽なことに我慢したり 給料が少ないとか、働かせすぎなんて困ることは一つもないんだ それのどこがいけないんだ?」 星人…

おばさんであること

行ってみようか? 明美は少し考えた. 自分は恋をして それに振り回されるタイプではない 堅実な生活、人に後ろ指刺されない生き方 そんな物を叩きこまれている 恋なんて一時の物 そうしっかり教育された そしてあきらめたあの人・・・・ 満里奈や美也の話に…

速水の子育て

「今日、塾におばあちゃん来たんだって? ホント、嫌い!なんで一緒に住んでいないのに しゃしゃり出てくるのかな~」 星人は両親が義母を煙たがっていることはよく知っている 速水が口に出さなくとも、そんなことは何となくわかる だから、この二人から叱ら…

おばさんであること

その結果がこうだ 内部進学は寄付金で何とかなる それは父が出してくれる 女の子を家に引きずり込んで 宿題はしないし、母親の明美はバカにする 明美の出た大学はお嬢様大学ではあるが 真面目にちゃんと勉強していた 今、お金をかけなければ内部進学すらおぼ…

速水の子育て

「きっと、私の血よ・・・ 父は東大教授なのに小学校のころから 授業を聞いただけではよくわかんなくて 家に帰って来てからママと何回もやって やっと覚えたんだけど 応用問題はできなくて 一生懸命テスト勉強しても 60点がせいぜいだったわ ママは中卒だけ…

おばさんであること

明美は帰りながら、少しムカついていた 私は何一つ間違っていないのに なぜ、満里奈はあんなふうに悪口言うし 徹は言うこと聞かないし、バカだし 夫は誰かいい人がいるし あんまり考えないようにしていたが 不公平じゃない? 子供のできない満里奈とやかく言…

速水の子育て

義母は虚を突かれて ものすごく動揺していたが 実際にそうだとは絶対に言わないだろう 速水はうんざりした顔で 「もう、いいでしょう 星人のことは放っておいてください 真剣に子育てすることがいいことであるのはわかりますが それをやる親の人間性も関係し…

おばさんであること

「私は好きになっちゃうと すべてあげたくなるのよね~ でも実は、その家庭教師と俊介と今の夫の三人」 美也は驚いたように 「え~そうなの? 明美は今でも旦那さん一人?」 「そうよ。 なんだかめんどくさいじゃない 子供が出来るでしょう! 子育てのめんど…

速水の子育て

速水派が言うと 義母は目を白黒させた 「母親が何を言うの! 星君は真面目でいい子じゃない」 速水はすかさず 「だからと言って、放りだすとか、かわいがらないとか 愛してないってことではないですけどね」 タケオがそれに続いた 「母さんは中学で家出した…

おばさんであること

明美の話も相当、普通ではない 子育てとか専業主婦とかしてると 普通であることが一番大事で 日本でマスコミがいつだって使用している常識で そこ以上が専業主婦の目標のような所がある でも、本当は皆それぞれの事情があるのだ 土壌が違うの競い合うなんて…

速水の子育て

「あれは頭がいいってわけじゃないよ 速水の父親が小さいころからいろんな話をしてくれたり まぁ、お母さんにわかるように言うと 最高の幼児教育をやってくれたからさ 今時、幼児教室は流行っているけれど 星人のように東大教授が直々に古典を教えてくれたり…

おばさんであること

歳をとってわかることがある たいがい、どんな人間も何か抱えているのだ 主婦であると何やかや見栄で縛られたり 子供のために口をつぐまなければならないことがほとんどだが この三人でいるとそんなしがらみも全くない三人なので いろんなことを忌憚なくしゃ…

速水の子育て

「それで、何が悪いんでしょうか?」 速水は無邪気に聞いた 義母は真っ蒼になった 「ちょっと、タケオ! 今の聞いた? 母親がそんなこと言うなんて・・・ あなた星君が不良になってもいいの? いい中学に行かなくてもいいって言うの!」 タケオは笑いながら …

おばさんであること

美也は「でもね、ちゃんと恋人ができたり結婚したりするとそっちの倫理が優先されてその人の為にどんなに請われても他の人とセックスすることは無くなったわ」優しそうで、大人しげな美也のその言い方は少し狂気めいている「なんか、引いちゃうけどわからな…

速水の子育て

義母は星人が塾に全く行ってないことを知ると あわてて速水のところに来た ちょうど、タケオも日本に帰って来ていて リビングでくつろいでいる まだ、昼過ぎだと言うのに二人でワインを開けている 義母はその二人の様子に、余計に頭に血が上った 「ちょっと…

おばさんであること

二人とも、この三人の中では一番良識ある美也が そんな言葉を放つのに、少し怖くなった 「え?でも、まぁ、色々あるから・・・・」 満里奈がそう言うと 日頃、一番考えの軽い明美すら 「ちょっと、冗談やめてよ!」 そう言ったくらいです でも、美也は少し笑…

速水の子育て

星人は塾のクラスが上がったり 成績が上がって 物凄く喜んでいる友達の母親をみると うちのママもああならいいのに そう、思ったり でも祖母の喜び方を見ると 薄っぺらいなぁと 最近思ったりする 速水は神秘的で美しく そんな世俗的なことは言わない それは…

おばさんであること

美也はそんなふうに見られて少し考えて「私は子供が大好きなの!でもね、子供だけじゃないの誰でも、すぐに本気で好きになっちゃうのよ小学校の頃から経験があるっていうのもそれかもしれない相手の人柄とか相手がどんな奴でも、好きになるの病気かもねそし…